2016年09月13日 10:00 〜 12:00 9階会見場
中国経済学者代表団 会見

会見メモ

来日中の経済学者代表団が会見し、記者の質問に答えた。
周強武 財政部国際財経センター主任(代表団長)
張宇燕 社会科学院世界経済政治研究所所長
畢吉耀 国家発展改革委員会対外経済研究所所長
趙晋平 国務院発展研究センター対外経済研究所部長
劉尚希 財政部財政科学研究院院長
左から周、畢、趙、張、劉の各氏
司会 福本容子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

「中国経済崩壊論」の真偽は?

八牧 浩行 (時事通信出身)

十数年以上も前から、多くのメディアで「中国経済崩壊論」が喧伝され、今も時折大見出しが躍る。ところが中国は実質国内総生産(GDP)で日本を追い抜き、米国をも凌駕する勢い。実際はどうなのか? 中国の経済学者代表団の会見は疑問をぶつける機会となった。

 

中国の今年上半期のGDPは前年同期比6.7%増。2ケタ成長から減速し、「ニューノーマル」中速安定成長に入った。公共投資、輸出中心から、中間層の急拡大に伴い個人消費が大きく伸びている。技術革新を通じた産業の高度化と構造改革を発展の原動力に据える――。一帯一路から人民元問題まで、5人とも自信満々。記者たちから矢継ぎ早の質問にも、得たりや応と回答した。

 

<GDPなど発表統計は信用できるのか?>
数値情報の透明化に努めており、誤差の要素は排除できる。偽造すればアナリストに簡単に見破られる。偽のデータをつくる動機もない。政府もデータの正確性を重視、改ざんなどできない。権威のあるIMFなどの統計でも同様の数字が発表されている。

 

<米中逆転はありうるか?>
今後5~10年間の年平均潜在成長率は6%以上。米国は2%程度で4ポイントの差がある。現在GDPは米国の17兆ドルに対し中国は11兆ドルなので、10数年後には逆転する。IMF発表の購買力平価方式では14年に既に米国を上回った。

 

<過剰在庫は解消できるのか?>
各省に削減淘汰を2~3年で達成するよう目標が定められている。上半期に石炭は37%進捗した。鉄鋼もG20で定められた段取りで進んでいる。

 

<地方の累積赤字は膨大?>
全人代で地方債務合計を上限10.7兆人民元(約153兆円)以内とすることを決定。この枠の中で各省に割り当てられ、コントロールされている。債務情報の公開が義務付けられて透明度は高い。借入資金は高速道路などインフラに向けられており、今後の経済成長の基盤となり得る。消費には使われておらず、過度に懸念する必要はない。

 

<中進国の罠に陥るリスクは?>
中国は現在中進国レベルにあるが、年間所得1万ドル(約102万円)以上の中間層が増加しており、現在の経済発展状況から見て、「中進国の罠」に陥ることはない。中国は富裕層、中間層が全体を底上げする「先富論」を推進。教育、医療に重点的に分配し、全国民に平等にチャンスを与え、中間層の拡大に努めている。

 

学者たちは、中国政府系の研究者なので額面通りには受け取れない面もあろう。彼らは、アベノミクスはじめ日本の実情にも驚くほど精通しており、底知れないしたたかさを感じた。日本人の深層心理には、格下と見ていた中国が急速に力をつけたため「崩壊論」に飛びつきたい意識があるのかもしれないが、読者や視聴者に迎合しない正確な実態把握が求められよう。


ゲスト / Guest

  • 中国経済学者代表団 / Chinese Delegation of Economists

    中国 / China

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