2016年09月01日 15:00 〜 16:30 9階会見場
「変わるアメリカ・変わらないアメリカ 米大統領選」⑨飯山雅史 北海道教育大学教授

会見メモ

元読売新聞ワシントン特派員の飯山氏が「トランプ現象と共和党の変質」のテーマで話し、記者の質問に答えた。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

米大統領選を読み解く トランプのなぜ、ヒラリーのなぜ

今年の米大統領選の取材は、米社会をディープに見て回れるのが何とも楽しい。なぜトランプ氏が共和党大統領候補になれたのか、盤石のはずのクリントン氏の伸び悩みはどんな理由からか。この目で確かめられる。

 

大統領選シリーズ9回目の飯山雅史氏と10回目の前嶋和弘氏の2人の研究会は、そんな疑問に答える内容だった。2人とも新聞記者OBだから、論がすっきりしている。豊富な図表とカラフルな写真を使い、とにかく分かりやすかった。

 

飯山さんはトランプ現象を支える白人中低所得層がいかに今の米社会で突出して地盤沈下しているかを多角的に説明した。この傾向の背後には、米政治界で数十年に一回起きる政党の再編成が起きているのだろう、というのがその結論だ。

 

民主党(リベラル)対共和党(保守)の軸では今の米政治を解説することはできず、グローバリズムに対する賛成・反対が新たな政党対立軸になるという大胆な見立ては、アメリカ取材経験と詳細な統計分析で裏打ちされ、刺激的だった。

 

面白かったのは世界全体での各所得層の変化。米国だけでなく世界中で中所得層の実質所得が減少している。トランプ氏支持に回っている米国の中所得層の不満・不安は世界共通だ、と言う。

 

前嶋さんは、第3政党候補の得票が激戦州では大統領選の帰すうを決めるという現実、第3政党候補の政策をどう2大政党側が取り込んできたかの歴史を解説した。第3政党、無党派という普段あまり注目されない米政治のプレイヤーが持つダイナミズムに触れ興味深かった。

 

今年はトランプ氏が本来「第3政党の候補」であるはずだったが、共和党候補として出馬することで同党を乗っ取ることに成功したとの分析は正鵠を射ている。2大政党制が確立されている米国ゆえに、第3政党候補が大統領になるのは極めて難しい。それならば、と2大政党の候補者として出馬し、国民の支持を集めて結果的に既成政党を変質させていくのが最近の傾向だという。

 

第3政党型の候補は2大政党の主流候補がさまざまなしがらみで掲げられない政策を訴えるから魅力的に映る。今の米国で2大政党が触れていない、しかも国民の支持を得る政策は何か、との問いに、「格差是正、富の再分配。サンダース氏の主張です」という答えもうなずけた。

 

企画委員 共同通信社論説委員長
杉田 弘毅

 

(この会見リポートは、9月9日開催の前嶋和弘・上智大教授会見との統合版です)


ゲスト / Guest

  • 飯山雅史 / Masashi Iiyama

    日本 / Japan

    北海道教育大学教授 / Professor, Hokkaido University of Education

研究テーマ:変わるアメリカ・変わらないアメリカ 米大統領選

研究会回数:9

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