2016年08月22日 18:00 〜 19:30 10階ホール
試写会「みかんの丘」

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会見リポート

アブハジア紛争を背景に戦争の不条理描く

長沼 節夫 (時事通信出身)

幾つもの民族がパッチワークのように複雑に絡み合うコーカサス地域の状況と戦争の不条理を、映画は簡潔かつ見事に描く。

 

みかん箱職人イヴォの所で食料を求めた2人組の兵士。銃声を聞いて駆けつけると1人は即死、もう1人は胸を撃たれて重傷だった。みかん農家のマルゴスと一緒に自宅のベッドに運んだ後、近くに死んでいた兵士数人を運んで埋めてやるが、中の1人はまだかすかに息があったので、別の部屋に運んで介抱した。

 

少しずつ回復すると、お互いが敵兵と知って殺意をあらわにするが、イヴォが「家の中で殺人は絶対に許さん」と怒鳴った。同地で家長の命令は絶対なのだ。

 

舞台はジョージア(旧グルジア)の西隣のアブハジア(冬季五輪の地ロシア領ソチに隣接)で、両者は戦闘状態にある。戦争勃発でアブハジア在住のエストニア人はほとんどが故国に引き揚げたのに、マルゴスはみかん山を見捨てられずに居残っているエストニア人。イヴォも同国人だ。胸を撃たれたのはチェチェンから来た傭兵でアブハジア軍、もう1人の負傷兵はジョージア兵だ。

 

やがて少しずつ言葉を交わすようになる敵同士。ある日、アブハジアを支援しているロシア兵数人がここに立ち寄り、息詰まる局面が展開する。敵同士でもロシア嫌いでは共通なのだ。

 

コーカサス南部のジョージアはソ連解体を機に91年、独立を果たすが、西部のアブハジアは独自の歴史・文化・宗教・言語を持ち翌年、ジョージアからの分離独立を宣言して戦闘を開始した。2年後、停戦合意されたが、今なお緊張状態が続く。

 

やはりアブハジア戦争を背景に描いた「とうもろこしの島」(2015年4月、クラブ主催の「ジョージアの夕べ」で上映=同年5月号に掲載)と交互に、近く岩波ホールが公開する。


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