2016年08月25日 12:00 〜 13:30 10階ホール
大野恒太郎 検事総長 昼食会

会見メモ

9月5日の退任を前に大野恒太郎検事総長が会見し、記者の質問に答えた。
司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

刑事司法改革 新たな検察のスタートに

天田 優里 (中日新聞名古屋社会部)

「一連の改革の首尾が整ったことが、区切りとなった」

 

2014年7月に検察トップに就いてから2年余、9月で退官する理由をこう説明した。その顔は「〝検察再生〟への道筋はつけた」という自信に満ちあふれていた。

 

今年5月に成立した刑事司法関連法。取り調べの録音・録画(可視化)の義務付け、司法取引制度の導入、通信傍受の対象犯罪の拡大を3本の柱とし、取り調べや供述調書への過度の依存から脱却することをめざしている。「より確実な証拠で適正に判断できるようになる、真相解明のための制度だ」と強調した。

 

当初は、検察内部でも取り調べの録音・録画の義務付けに消極的な意見が多かったというが、近年は黙秘や否認事件が増えるなど捜査環境が変わってきた。取り調べを受ける被疑者の表情が分かるなどの観点からも、供述調書より高い証拠価値があり、「取り調べの適正さが確保されるというメリットの方が大きい」と力を込めた。

 

検察改革のきっかけとなった大阪地検特捜部の証拠改ざん隠蔽事件を「国民から厳しい批判が集まり、従来型の手法に引導を渡すことになった」と振り返る。自白や供述調書を軸としたこれまでの捜査手法が、検察組織の構造的な腐敗を招いたといえる。この手法を見直し、他の先進国と同じ、取り調べや自白によらない証拠収集が求められるようになった。

 

検察の信頼を失墜させた事件の発覚から丸6年。制度は整いつつあるが、信頼回復は道半ばといえる。司法取引制度の導入や通信傍受の対象拡大には「冤罪を生むのではないか」「不当に人権を侵害するのではないか」など、国民からの不安の声も根強い。制度の適切な運用を期待しつつ、改革の行く末を見届けたい。


ゲスト / Guest

  • 大野恒太郎 / Kotaro Ono

    日本 / Japan

    検事総長 / Attorney General

ページのTOPへ