2016年07月20日 14:00 〜 15:00 10階ホール
アフメト・ビュレント・メリチ 駐日トルコ大使

会見メモ

メリチ駐日トルコ大使が7月15日に発生したクーデター未遂事件を受けて会見し、記者の質問に答えた。
司会 脇祐三 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)
通訳 ウリケル大使顧問


会見リポート

「トルコは早期に安定を取り戻す」 国際社会の懸念に反論

二村 伸 (NHK解説副委員長)

「自由は無限ではない。テロを煽る行為は表現の自由として捉えるべきでない」。クーデター未遂から4日後、急きょ行われた記者会見は、トルコ政府の立場を説明する大使と、強権的な政府の姿勢に疑問を抱く記者団とのせめぎ合いの感があった。

 

大使は「ギュレン師率いるテロ組織が企てたことは明白だ」と強調。その証拠に、クーデターを起こした兵士がギュレン師手書きの文字をお守りとして持っていたこと、戦車の中にいた兵士がギュレン運動のメンバーだと自白したことを挙げた。それで5万人以上の拘束や解任、職務停止が正当化されるのか、日本人には理解が難しいだろう。

 

「トルコの各機関に支持者が潜んでいる」。ギュレン運動に関わる全ての人々を根こそぎ摘発、排除することこそがエルドアン政権の最大の目的であることを、大使自ら言明した。日本国内の関連団体についても活動停止を日本政府に求めているという。しかし、そのギュレン師とエルドアン氏が長年協力関係にあったことは周知の事実である。

 

「国際社会からトルコ政府に支持と連帯のメッセージが寄せられた」と大使は述べた。しかし、強権的な捜査方法には欧米諸国から強い懸念が示されている。

 

トルコ政府が求めたギュレン師の身柄引き渡しにアメリカが応じるかは不明である。死刑制度の復活に関する議論が始まることにEUは警戒を強めている。復活すればトルコのEU加盟の悲願は水泡と帰すだろう。トルコの外交は重大な局面にある。相次ぐテロと収束の兆しが見えない難民問題、それらの原因となっているシリアの混迷、全てにトルコは鍵を握っており、その不安定化は深刻な結果を招きかねない。

 

「トルコの民主的な体制は揺るぎなく、トルコ経済が堅調であることが示された。早期に安定を取り戻すだろう」。大使の言葉通りであってほしいと願わざるを得ない。


ゲスト / Guest

  • アフメト・ビュレント・メリチ / Ahmet Bülent MERIÇ

    トルコ / Turkey

    駐日大使 / Ambassador to Japan

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