2016年07月07日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「BREXITとEUの未来」④梅原季哉 朝日新聞編成局長補佐/鶴原徹也 読売新聞編集委員

会見メモ

英国のEU離脱国民投票を取材し帰任したばかりの朝日新聞の前欧州総局長と現地出張した読売新聞の元欧州総局長が、英国の現状とEUの展望について話し、記者の質問に答えた。
司会 土生修一 日本記者クラブ事務局長


会見リポート

考えさせられるメディアの役割

小倉 孝保 (毎日新聞社外信部長)

日本のジャーナリストで欧州を語らせるのに今、2人以上に適当な人はいないだろう。梅原季哉氏、鶴原徹也氏はともに大陸欧州と英国双方で特派員経験がある。しかも、英国の欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票を現場で取材し、帰国したばかりである。

 

会見で梅原氏はタブレット端末で写真を紹介しながら、国民投票で離脱派が勝った背景や欧州の将来を整然と説明した。一方、鶴原氏は落語家がまくらを語るように、長年の取材経験から感じていることを思いつくままに語った。2人のキャラクターの違いが感じられ面白かった。

 

梅原氏は、「離脱派、残留派双方とも寄り合い所帯だったが、離脱派が明確にEUを敵として設定したのに対し、残留派は派内で互いに足を引っ張り合った。運動の熱量は離脱派が高かった」と現場取材の肌感覚を述べた。また、鶴原氏は、「キャメロンは首相になって以来、一貫して反EUを主張してきた。そんな彼がEU残留を主張しても説得力がない。キャメロンは政権にとどまりたいがために国民投票実施を約束したが、愚かな選択だった」とした。

 

印象に残ったのは、両氏が投票結果への影響として英国のメディア、特に新聞報道について言及した点だった。

 

梅原氏は、離脱を主張する大衆紙が根拠のない報道を続けたことについて、具体的な事例を挙げて説明し、「(高級紙)フィナンシャル・タイムズで世の中は動かないことがわかった」と語った。鶴原氏も「離脱派のメディアは平気でウソをついて離脱をあおった。これが国民の判断を鈍らせた」と述べた。メディアの役割について考えさせられる内容だった。

 

結果については、両氏とも残留を予想していたという。「ロンドンで取材している限り、離脱派にほとんど会ったことがなかった。そのため(自分の見通しに)ややバイアスがかかったかなと思う」(梅原氏)、「不明なことに予想を外してしまった」(鶴原氏)と率直に語る姿も好ましかった。英国のEU離脱問題を考える緊急連続会見の最終回を飾るにふさわしい会見だった。


ゲスト / Guest

  • 梅原季哉 朝日新聞編成局長補佐/鶴原徹也 読売新聞編集委員

研究テーマ:BREXITとEUの未来

研究会回数:4

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