2016年07月21日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「沖縄から考える」(12)日米地位協定と沖縄問題 我部政明 琉球大学教授

会見メモ

琉球大学の我部政明教授が、米国が他国と結んでいる地位協定群の解説をまじえ日米地位協定の現状とあり方について話し、記者の質問に答えた。
司会 島田敏男 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

日米地位協定 沖縄が求める改定は

西川 龍一 (NHK解説委員)

米兵犯罪が発生するたびに改定を求める声があがる「日米地位協定」。米国は日本以外とも地位協定を結んでいるが、他国との協定はどうなっているのかはほとんど知られていない。我部教授は、米国が各国と結ぶ地位協定の性格を踏まえ、沖縄が要求する改定と根拠を明らかにした。

 

そもそも地位協定は、米国が戦争中ではなく平時に自国軍を大規模に展開する際、受け入れ国での不平等な扱いを回避することを目的とする。日本だけでなく、世界の115カ国との間で存在するという。ただし、協定の形態として、NATOの多国間協定とそれ以外の二国間協定があり、後者は日本のほか、韓国、フィリピン、オーストラリアとの間で結ばれている。

 

地位協定には、平時の海外展開に対し、自国民の支持を得るという意味合いもある。当事国の法律で裁かれることを避ける刑事裁判権をめぐる規定を中心に構成されているのも、自国民の人権を守ることが目的だ。日本では、米兵犯罪への抑止力という観点からしばしばこの「刑事裁判権関連」が改定要求の主眼となりがちだ。しかし、多くの基地を抱える沖縄が求める改定は、これに加えて「基地提供関連」「請求権関連」「環境権」など多岐にわたる。たとえば「基地提供関連」では、基地内への地元住民の立ち入りの緩和や、民間施設の緊急時以外の使用禁止を求めている。「環境権」は、基地返還時の原状回復や汚染物質の適切な保管などの明記を求めるもので、そもそも協定が結ばれた当時は世界的に見ても関心が低かった分野だ。

 

改定が一度もない日米地位協定だが、米韓地位協定は改定によって環境権が盛り込まれたという。我部教授は、改定に向けて、日米二国間の必要性について各々が論拠をぶつけていくことが重要と言う。そして、日本全体の利益と特定の沖縄への負担を均衡させてきたのが、民主的で自由で公平を原則とする憲法であるとも指摘した。


ゲスト / Guest

  • 我部政明 / Masaaki Gabe

    日本 / Japan

    琉球大学教授 / Professor, University of the Ryukyus

研究テーマ:沖縄から考える

研究会回数:12

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