2016年07月05日 13:40 〜 14:40 9階会見場
ハッソン イスラエル経済産業省チーフ・サイエンティスト

会見メモ

イスラエルの産業政策における研究開発方針を決定する任にあるアヴィ・ハッソン氏から「Building Innovation Ecosystems」と題して話し、記者の質問に答えた。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
通訳 長井鞠子(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

経済成長で自信満々 日本にも強気の投資呼び掛け

杉田 弘毅 (企画委員 共同通信社論説委員長)

イノベーション面における日本・イスラエル協力の呼びかけを柱とする記者会見は、専門用語と数字が多かったが、最後に紹介したレオナルド・ダビンチの言葉が印象に残った。

 

「何かをなす人はすわって事態を眺めていることはない。彼らはその場に出て行って事態を起こすのだ」

 

東京で指示待ちに慣れがちな生活を送っていると、こうした言葉を聞くといても立ってもいられなくなるものだ。スタートアップネーション(起業国家)を掲げて経済面で躍進するイスラエル政府の責任者のこの引用発言は説得力が加わる。

 

高度技術への外国からの投資額は過去10年で2倍に伸びた。活発な投資実績を物語る。国際競争力調査では科学研究・技術革新の質ではトップだ。もちろん建国以来4度の中東戦争、加えて小規模な戦争を重ねて積み上げられてきた軍事技術の高さが、技術立国の基礎にある。

 

それにしても周囲を敵対するアラブの国々に囲まれ、パレスチナ問題で孤立していたイスラエルが、いつのまにか自信をつけて世界中で商談を進めるようになった変化に驚く。「日本の投資は遅いし少額だ」と指摘するハッサン氏の発言からは強気の姿勢がうかがえる。

 

かつて日本はアラブ諸国による石油禁輸の恐怖から、イスラエルとのビジネスは最小限にとどめられた。だが、今はIT・サイバー部門を中心にイスラエルからのビジネスマンが頻繁に東京を訪れる。軍事面の交流も盛んだ。

 

イスラエルは「いかなる政治信条の相手とも技術革新で協力関係を築く」と言う。しかし、将来敵となる可能性のある国、たとえばイランに軍事転用可能な技術が渡る危険をどうみるのだろう。

 

そんな質問にも「企業が利潤の可能性を認めれば、共同事業を進める」と屈託ない。ハイテクを中心にアラブに対して圧倒的な優位を得た余裕からだろうか、あるいは米国、ロシア、中国と大国のすべてと良好な関係を築いた実績からだろうか、かつてのイスラエルとは違う自信あふれる顔を見せた。


ゲスト / Guest

  • アヴィ・ハッソン / Avi Hasson

    イスラエル / Israel

    経済産業省チーフ・サイエンティスト / Chief Scientist of the Ministry of Economy and Industry

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