2016年07月05日 15:00 〜 16:00 9階会見場
「チェンジ・メーカーズに聞く」⑦黒川光博 虎屋社長

会見メモ

とらやの黒川社長が、和菓子の伝統を守りつつ新商品開発に取り組む同社の事業展開などついて話し、記者の質問に答えた。
司会 水野裕司 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

羊羹を世界へ 革新に挑み続ける老舗

水野 裕司 (企画委員 日本経済新聞社論説副委員長)

和菓子は贈答需要の低迷が響いて国内市場が縮小している。製造販売する企業も減少の一途をたどっている。そのなかで羊羹でおなじみの虎屋は、いくつもの新機軸を打ち出して気を吐く老舗企業だ。

 

1980年、先代社長のときにパリに出店した。フランス人に受け入れられる商品企画に苦労したが、15年ほどかけて軌道に乗せた。91年に黒川光博氏が社長就任後は、新しいタイプの店づくりが加速している。

 

2003年、若い女性など新しい顧客の開拓を狙い、和洋の素材を組み合わせた創作菓子の「TORAYA CAFÉ(トラヤ カフェ)」1号店を東京・六本木に開設。07年にはギャラリー併設の東京ミッドタウン店をオープンし、静岡県御殿場市に広大な庭園を備えた「とらや工房」も開店した。

 

創業が室町時代後期にさかのぼる虎屋は京都で事業を営んできたが、明治維新を機に東京に進出。その後も百貨店での販売を始めるなど、時代の変化とともに会社を変えてきた歩みがある。パリへの出店や新型店舗の相次ぐ開設もその延長線上にある。

 

が、黒川氏はこれらの取り組みについて、「やらなければならないから、やっているだけ」と話す。1~2年前までは、「伝統とは革新の連続である」と言っていたこともあったが、ことさらそう強調することはなくなった。

 

環境が変われば自然に、自らを変化に順応させる。そのくらい、しなやかに会社にならなくてはと、自分に言い聞かせているかのようだ。「和菓子をやってつぶれるのなら、洋菓子をやればいい」と、経営姿勢はあくまで柔軟。

 

新型店舗の企画にあたっては、「入社4年目の女性が一番いいアイデアを持っていたので、彼女に任せた」という例もある。長い歴史のある老舗には、若手を鍛えるなど人材育成に力を入れる企業が少なくないが、なかでも虎屋の例は思い切った登用だろう。

 

目標は、「羊羹を世界へ」だそうだ。「チョコレートは世界中に広がったが、カカオ豆とミルク、砂糖による製法が生まれたのは、たかだか170年ほど前。そうたいそうな年月ではない」。羊羹も、世界に普及させるやり方は必ずあるとみる。それには何が必要かと、戦略を練っている。


ゲスト / Guest

  • 黒川光博 / Mitsuhiro Kurokawa

    日本 / Japan

    虎屋社長 / President, Toraya

研究テーマ:チェンジ・メーカーズに聞く

研究会回数:7

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