2016年06月30日 16:00 〜 17:30 9階会見場
民間税調 三木義一座長ほか 会見

会見メモ

民間税調の三木義一座長(青山学院大学学長)、田中秀明明治大学教授、水野和夫法政大学教授、青木丈氏(弁理士)、戸田智彦氏(弁護士)が、参院選を前に「投票を前に税のあり方を選挙で問い直そう」をテーマに話し、記者の質問に答えた。
司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)
左から戸田氏、青木氏、水野氏、三木氏、田中氏


会見リポート

「納税者が決める税制に」の意気込み示す

久原 穏 (東京新聞論説委員)

半年ぶりの会見となった民間税調のメンバーは相変わらず熱っぽく税制の現状に対する危機感を語った。核心を突く問いかけの数々に、出席者も大いに触発されたようだった。

 

民間税調は昨年12月、与党税制改正大綱がまとまるのに合わせ「税制は役人や政治家任せでなく、主権者である納税者自身の手で決めるべきだ」として、独自の民間税調大綱を発表した。今回は参院選に当たっての提言を示す狙いである。

 

冒頭、座長を務める三木義一・青山学院大学学長は「各党のマニフェストを見ると、得票目当ての甘い施策が並ぶ一方、財源となる税については曖昧だ」と指摘し「こうした傾向を変えうるのは選挙を通じた主権者の意志だ」と強調した。

 

この甘いマニフェストに関して、同席した田中秀明・明治大教授が「オランダなどでは各党の選挙公約で示された税負担やコストが妥当かを分析する機関があり、投票の判断材料となっている。そういう選挙インフラは日本でも必要」と説明、大いに得心した。

 

今回、提言した3点はどれも喫緊の課題ばかりである。1つ目は、安倍政権が消費税の税率引き上げ再延期を決めたことに対し「消費増税は予定通り行うべきだった。延期であれば法人税減税を元に戻すことなどで財源を確保し、財政健全化の道筋を明らかにすべきだ」と延期に伴う代替措置を求めた。

 

2つ目は、マイナンバー制度で国民に付与されるポータルサイトを利用し「年末調整を廃止して申告納税制度に」である。民間税調の一貫した主張は、年末調整制度によりサラリーマンが確定申告をしないで済むことが税制への無関心を生んでいる、ということだ。来年から利用が始まるポータルサイトを利用すれば比較的容易に年末調整の廃止と申告納税制への移行ができるとした。

 

そして3つ目は「不正防止に向けた国際課税の強化」。パナマ文書によって国境を利用した税逃れに国民の関心が高まった今こそ、タックス・ヘイブン規制を強化すべきとした。EU10カ国が実施を準備している金融取引税を導入すれば、行き過ぎたマネーゲームを抑制し、巨額の税収増も可能だとして実現を促した。

 

タックス・ヘイブン問題といえば、民間税調の中心メンバー、志賀櫻弁護士こそ国内第一人者だった。その志賀さんが昨年末に亡くなり、三木代表は「民間税調大綱は彼の『遺言』そのものだ」と紹介した。生前、民間税調の議論を引っ張っていた志賀さんの姿が目に浮かび、身が引き締まる思いがした。


ゲスト / Guest

  • 三木義一

    日本 / Japan

    民間税調座長

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