2016年06月24日 09:30 〜 11:30 10階ホール
中国海洋問題専門家代表団

会見メモ

中国海洋問題専門家代表団の3氏が南シナ海問題に関する中国の立場について話し、記者の質問に答えた。
司会 坂東賢治 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

写真左から張新軍氏、于鉄軍氏、呉士存氏


会見リポート

南シナ海仲裁にあらためて断固反対

藤原 秀人 (朝日新聞社国際報道部)

中国の南シナ海での主張と行動は国際法に違反する、というフィリピンの提訴を受けた仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)が近く司法判断を示すのを控え、中国の海洋問題専門家が中国の正当性を訴えた。

 

「南シナ海問題は関係国の主権と海洋管轄権をめぐる紛争だ」。呉士存・中国南海研究院院長(右)はこう述べたうえで、「問題は話し合いで解決すべきなのに、一方的に提訴した」とフィリピンを批判した。南シナ海の平和と安定への中国の「努力」を強調し、各国から批判を浴びている人工島も国際社会への「公共財」と主張した。

 

京都大学で博士号を取得した張新軍・清華大学副教授(左)は「中国は決して仲裁を受け入れない」としたうえで、受け入れなくても国連海洋法条約に違反しないとの立場を表明した。

 

東京大学に留学したことのある于鉄軍・北京大学副教授(中央)は「南シナ海問題はずっと日中間の問題ではなかったのに、日本が介入するようになった」と批判。今後の日中関係の試練となると指摘した。

 

質疑では、国連海洋法条約から離脱する可能性について、呉氏は「脱退する場合は複雑な国内手続きが必要だ」と述べたうえで、「条約にとどまって貢献していく」と話した。南シナ海に防空識別圏を設ける件については、「南シナ海で領海の基線を設定していないので、技術的に難しい」と語った。

 

中国南海研究院は南シナ海問題に特化した政府系シンクタンク。約70人の専従スタッフが活動しており、呉氏は内外で中国の主権を訴えている。日本のメディアがこの日の会見を伝えなかった一方で、同研究院のホームページは会見を速報し、多くの社が参加したことを報じた。張、于両氏も達者な語学力をいかして、海外での活動も多い。中国の宣伝活動のたくましさを感じざるを得ない会見だった。


ゲスト / Guest

  • 呉士存 中国南海研究院院長 (団長)/于鉄軍 北京大学国際戦略研究院副院長、副教授/張新軍 清華大学法学院副教授 / WU Shicum / YU Tiejun / ZHANG Xinjun

    中国 / China

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