2016年06月15日 14:00 〜 15:00 9階会見場
野口元郎 国際刑事裁判所(ICC)被害者信託基金理事長

会見メモ

国際刑事裁判所(ICC 在ハーグ 日本は2007年加盟)の被害者信託基金理事長にを務める野口さん(元法務省法務総合研究所国際協力部長)が「ICCを中心とする国際刑事裁判の現状と課題-ICC、カンボジア、スリランカなど」をテーマに話し、記者の質問に答えた。
司会 中井良則 日本記者クラブ顧問


会見リポート

集団殺害や人道に対する犯罪等を訴追し 女性・子供ら被害者を救済・支援

原田 健男 (山陽放送出身・元JNNカイロ支局長)

国際刑事裁判所(ICC)は、集団殺害犯罪・戦争犯罪等を犯した個人を処罰するため2003年に発足したばかりの組織である。野口元男さんはそのICCの「被害者信託基金」(TFV)の理事長に今年4月再任された。最高検察庁検事でカンボジア・クメールルージュ特別法廷やスリランカ内戦の失踪者調査でも活躍し、その実績が評価された。日本は最大の資金拠出国として支援している。

 

ICCは2012年3月、コンゴ民主共和国の軍閥指導者であるルバンガ被告に、14年の禁固刑の有罪判決を初めて出した。少年を兵士として戦わせた罪である。TVFはこれまでもコンゴやウガンダで性的暴力の被害者や元少年兵、誘拐された児童など約8万4000人に対する支援を行ってきたが、損害賠償の実施のための活動も始めている。

 

野口さんは「国際刑事裁判所に被害者救済組織があることが大きな意義がある」とし、被害者やそのコミュニティーに属する人たちを対象に、拷問で手足を切られたり、強姦された人たちへの「身体的リハビリ」、性的被害者等への「精神的リハビリ」、さらに再び立ち上がって生活を立て直すために小口資金を貸したり、文字を教えたり、そのために子どもを預けたりできるような場所を提供するなどの「物質的支援」をしていくという。救済対象の多くは女性だそうだ。

 

一方、ICCには心配の種もある。スーダンの現職大統領やケニアの正副大統領といったアフリカの国家元首が訴追される事例があったため、アフリカ諸国の間で脱退の動きがあることだ。また国連安保理の常任理事国5カ国のうちアメリカ・ロシア・中国の3カ国が加盟していない。アメリカは世界各地に軍隊を展開しているが、紛争に巻き込まれて訴追される可能性が少しでもあるのなら、加盟する意味がないと感じているようだ。またICCにはパレスチナが2005年に加盟し、「戦争犯罪」が引き起こされているとしてイスラエルの指導者を訴え、現在調査が始まっている。「パレスチナ問題」がICCの場で取り上げられる可能性も出てきている。


ゲスト / Guest

  • 野口元郎 / Motoo Noguchi

    日本 / Japan

    国際刑事裁判所(ICC)被害者信託基金理事長 / Chair of the Board of the Directors of the Trust Fund for Victims (TFV) of the International Criminal Court (ICC)

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