2016年06月16日 14:00 〜 15:00 9階会見場
「国連と日本人」⑨ 平原弘子 国連南スーダンミッション・ベンティウ事務所長

会見メモ

国連南スーダンミッション(UNMISS)のベンティウ事務所長を務める平原氏が会見し、記者の質問に答えた。
司会 原田正隆 日本記者クラブ企画委員(西日本新聞)


会見リポート

平和って分かってる?

松尾 圭介 (時事通信社外信部編集委員)

2011年に悲願の独立を果たした南スーダンは、わずか2年で内戦に突入してしまった。対立するキール大統領の政権軍と、マシャール副大統領ら反政権派が激戦を展開した地域の1つが油田地帯の北部ユニティ州だった。州都ベンティウは14年、1カ月ごとに支配者が入れ替わる激戦地だった。そのベンティウで今、邦人女性が国連南スーダン派遣団(UNMISS)を率いて9万5000人に及ぶ避難民を国連施設に保護して守っている。

 

南スーダンでは昨年8月の和平協定がようやく機能しつつある。今年4月末にマシャール副大統領が首都ジュバに戻り、キール大統領と共に暫定政府を発足させた。平原弘子さんは、それに先立つ2月からUNMISSのベンティウ事務所長を務めている。12年からウガンダ、ケニア、エチオピア3カ国と国境を接する南部の東エクアトリア州でUNMISSを率いてきた。さらにそれ以前にはスーダン西部ダルフール地方で勤務した経験もある。満を持しての最前線入りだが、ユニティ州について会見では「戦闘の記事ばかり続いていたが、悪い話ばかりではないですよ」と平原さん。音楽を演奏し、踊り、マラソン大会で懸命に走る、笑顔が弾ける現地の人々の画像をいくつも紹介した。

 

平原さんが「南スーダンで国連平和維持活動(PKO)をやっている」と述べると、「自衛隊の方?」とよく聞かれるという。民生課、人権課といった文民もPKOには大勢いることを会見では強調した。モンゴル軍、ガーナ軍、カンボジア軍、インド軍、そして国連警察や刑務官も取りまとめる大役を平原さんは担っている。

 

国連施設内の避難民キャンプでは、国連警察が活動中。「まともに機能している警察を見るのは初めて」という人もいる。独立前から長い内戦の時代が続いていた。「南スーダンの人たちの記憶にはずっと戦争がある。大統領や副大統領もそうだ」と指摘した。平和な暮らしを構築する素晴らしさを懸命に説いても「平和って分かってる?」と問い掛けずにはいられない時がある。

 

それでも平原さんの前向きな姿勢は変わらない。南スーダンでは今、平原さん以外にも日本人女性が多いという。「国連に興味を持つ人が増えてきた時期に、ちょうど南スーダンが独立して露出が増えた。タイミングが合って募集に応じる人が増えたのではないか」と平原さんは考えている。ただ、それなら日本人男性も増えてよさそうだが、なぜか元気なのは日本人女性。これは、今後追求すべきテーマかもしれない。


ゲスト / Guest

  • 平原弘子 / Hiroko Hirahara

    日本 / Japan

    国連南スーダンミッション・ベンティウ事務所長 / Head of Field Office, United Nations Mission in the Republic of South Sudan

研究テーマ:国連と日本人

研究会回数:9

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