2016年06月13日 13:00 〜 14:00 10階ホール
「LGBTと社会」② 村木真紀 虹色ダイバーシティ代表

会見メモ

『職場のLGBT読本』の著者、村木真紀 虹色ダイバーシティ代表が職場と性的マイノリティを理解し、活かすための取り組みなどについて話し、記者の質問に答えた。
司会 宮田一雄 日本記者クラブ企画委員(産経新聞)


会見リポート

多様性を前提に報道を

片山 佐和子 (河北新報社東京支社編集部)

村木真紀さんの会見は、前日12日に起きた米国の銃乱射事件の話題で始まった。100人以上が死傷したフロリダ州の現場は同性愛者らが集うナイトクラブ。性的少数者が標的にされ、米史上最悪の惨事になった。

 

「LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字)に関する前向きなニュースは増えた。だが、追い風が強まると向かい風も強まる」と村木さん。日本でもLGBTに配慮する企業に抗議が来たケースを紹介し、「事件は対岸の火事ではない」と差別や偏見の根強さを訴える。

 

村木さんが代表を務めるNPO法人「虹色ダイバーシティ」(大阪市)は、企業の経営戦略で重要性を増すダイバーシティ(多様性)に着目して活動する。女性や障害者、外国人ら、多様な人材が活躍できる職場は「企業の力になる」という考え方。自身もレズビアンの村木さんは、LGBTなどの性的少数者も対象に加え、生き生きと働ける職場を作ることを目指している。

 

国際的な潮流もあり、性的少数者に目を向ける企業は増えてきた。昨年は研修や講演を100件以上行ったという。個別相談やコンサルティング、調査研究事業にも取り組む。最も多い相談は「男性従業員に女性として働きたいと言われた」という内容。村木さんは「見た目は徐々に変わるので、『やってみたら大丈夫だった』という反応が多い」と説明する。

 

企業が配慮するべき対象は従業員のほか、顧客や投資家もいる。電通総研の15年の調査では、成人の7.6%が自身をLGBTと答えた。コンプライアンスはもちろん、「マーケットとしての魅力もある」という。

 

性的少数者が直面する、社会的困難の話題もあった。男女で分ける場面が多い学校生活。同性カップルに法的保障がないこと。当事者の自殺リスクの高さ。村木さんはLGBTが抱える困難について「さまざまな社会問題につながる。ベッドの上の問題ではない」と指摘した。

 

性的少数者の視点を知ると、性自認や性的指向を固定化して成り立つ社会の「ゆがみ」が見えてくる。村木さんが「性の多様性を前提に報道してほしい」と示した「メディア向けチェックリスト」は取材者の価値観や心構えを問い掛ける。取材対象だけではなく、自身と向き合う機会にもなりそうだ。


ゲスト / Guest

  • 村木真紀 / Maki Muraki

    日本 / Japan

    虹色ダイバーシティ代表 / Maki Muraki, Nijiiro Diversity

研究テーマ:LGBTと社会

研究会回数:2

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