2016年06月13日 18:00 〜 19:45 10階ホール
試写会「シアター・プノンペン」

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会見リポート

ラブストーリーに織り込まれるカンボジアの苦悩

明珍 美紀 (毎日新聞社会部)

古ぼけたスクリーンに、ヒロインが映し出される。クメール王国を舞台にしたラブストーリー。奔放な女子学生、ソポンが、廃墟となった映画館に迷い込んで見たものは、映画女優だった若き母の姿だった――。

 

旧ポル・ポト派のクメール・ルージュの大虐殺を題材にしたカンボジア映画「シアター・プノンペン」(2014年)は、郷愁の色を帯びた物語の幕開けから暗黒の時代へとさかのぼる。母と父、映画館の元主人らの愛憎が虐殺事件と絡み合い、カンボジアの人々の重い過去を浮き彫りにする。

 

企画したのは、同作品でカンボジア初の女性監督となったソト・クォーリーカーさん(42)だ。「海外からやってくる記者たちは主にクメール・ルージュの実態や情報を追いかけ、カンボジア人の内面に目を向けることはなかった」

 

現地コーディネーターとして、数々の取材や映画のロケなどに関わるうちに「自分たちの視点であの大虐殺を描こう」と心に決めた。1つの国に、かつての加害者と被害者が共に生きている。その不条理と苦悩が、ストーリーの随所に散りばめられている。

 

考えてみれば、日本も植民地支配時代は抑圧する側にあり、朝鮮半島分断の責任を問われる立場にある。カンボジアの街を背景にしたノスタルジックな映像に見入りながら、この国のありようを重ね合わせた。

 

★監督一家が来日

 

日本での公開前の5月下旬、ソト・クォーリーカーさんが家族と来日した(写真=右がソト監督、筆者撮影)。東京の国際交流基金で、ソト監督と女優の渡辺えりさんとの対談があった。

 

映画のエグゼクティブ・プロデューサーは、ソト監督の夫ニック・レイさん(43)=英国出身=と母タン(68)さんらが務め「ほとんどファミリーマネーで製作した」と言う。「カンボジアはまだまだ男性中心の社会。女性がメッセージを伝えるのは難しい」とソト監督が言うと、渡辺さんは「日本でも大変。監督がこのような映画をつくってくれてうれしい」とエールを送った。「この映画はカンボジアの歴史と家族の物語ですが、現代の社会や豊かな自然の風景も見ることができます」とソト監督は話していた。


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