2016年06月02日 14:00 〜 15:00 9階会見場
「国連と日本人」⑧ 武内和彦 国連大学上級副学長

会見メモ

国連大学の武内和彦上級副学長が、大学の活動や日本のグローバル人材の育成などについて話し、記者の質問に答えた。
司会 土生修一 日本記者クラブ事務局長


会見リポート

現場で世界の課題に挑戦 人材育成の大切さ強調

池上 秀紀 (共同通信社社会部次長)

武内和彦氏はサステイナビリティの専門家である。「持続可能な社会」の実現、それを担う人材の育成に向け、2008年以降、国際連合大学(東京都渋谷区)の副学長を務めてきた8年間を振り返った。

 

国連大学は日本に本部を置く、唯一の国連機関である。予算の制約に苦しみながらも、シンクタンク、教育機関(大学院)として地球規模の課題の解決に寄与してきた。特に発言が熱を帯びたのは、国連がうたう「持続可能な開発目標(SDGs)に触れた時のこと。人類の営み、生産活動を自然と調和させる壮大なプロジェクトであり、国連大学が「知」の分野で世界に貢献することができる、と訴えた。

 

日本の途上国支援の在り方にも言及した。中国を念頭に置き、もはや日本が金額の大きさ、物資の量で存在感を発揮するのは難しいとの認識を示すとともに、これからは「質」を重視すべきだと強調した。氏が考える「質」とは、人材育成を指す。例えば、発展途上国の現場へ自ら足を運び、現地の言葉で現地の人と共に考え、答えを見つけることができる若者を育てる。ひいては、これが世界の課題を解決することにもつながるという考え方だ。

 

「私自身、あまり『グローバル人材』という言葉は好きではありません。英語で授業すればいいというイメージがありますが、違和感があります」。むしろローカルな課題とグローバルな課題を融合できる人材が必要、と説く。現在を未来につなぐため、現場と世界を橋渡ししてきた氏の言葉には、ずしりとした重みがあった。6月末に上級副学長の任からは退くが、客員教授として引き続き課題に取り組むという。


ゲスト / Guest

  • 武内和彦 / Kazuhiko Takeuchi

    日本 / Japan

    国連大学上級副学長 / Senior Vice-Rector, United Nations University (UNU)

研究テーマ:国連と日本人

研究会回数:8

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