2016年05月10日 18:00 〜 19:55 10階ホール
試写会「シチズンフォー スノーデンの暴露」

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会見リポート

取材過程を克明に 説得力あるドキュメンタリー

大木 俊治 (毎日新聞社論説委員)

最後まで画面にくぎ付けだった。

 

何しろ、世界を震撼させた事件である。米国家安全保障局(NSA)の不正を暴露した元CIA職員・スノーデン氏本人の告発から公表に至る取材過程を克明に記録した同時進行ドキュメンタリーでありながら、サスペンスタッチの映像作品に仕立てた手腕には敬服せざるを得ない。

 

外信部デスクとしてこのニュースに接した当時は多くの疑問があったが、香港でのインタビューや脱出の過程をリアルに見せつけられ、どういう経緯でニュースが発信されたのかをあらためて知ることができた。

 

国家を「裏切った」スノーデン氏の評価は難しい。冷静に見なければと思いつつ、取材当事者による気迫のこもった映像に思わず、強く共感してしまった自分がいた。

 

最後の場面。スノーデン氏が暮らすモスクワのアパートの位置は、遠景のクレムリンと足元のモスクワ川を見れば、かつて現地に駐在した経験からおおよそ想像がつく。そこでさらに、ドイツの米軍基地が無人機によるアフガニスタン攻撃の拠点にされているという新たな「特ダネ」が暴露される。思わず興奮したが、実は昨年4月にネット情報誌「インターセプト」で報じられていたと後から知った。日本では話題にならなかったが恥じ入るしかない。

 

今は「パナマ文書」が世界を震撼させている。内部告発による「タレ込み」をジャーナリストがどうすくい上げるか。私のようなアナログ記者には難しいネット情報の世界を、誰にでも伝わるように映像化した。数々の授賞はその説得力にあるのだろう。

 

それでもなお違和感が拭えないのは、米政府の不正を告発したスノーデン氏が、市民社会を弾圧しているロシアに庇護されているという皮肉な現実である。


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  • 「シチズンフォー スノーデンの暴露」 / CITIZENFOUR

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