2016年05月18日 16:00 〜 17:00 10階ホール
「変わるアメリカ 変わらないアメリカ 米大統領選」⑦グレン・フクシマ 元米通商代表部日本担当部長

会見メモ

現在、クリントン陣営の選対本部長を務めるジョン・ポデスタ氏が2003年に創設した米先端政策研究所(Center for American Progress : CAP)上席研究員を務めるフクシマ氏が大統領選について分析し、記者の質問に答えた。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

「予測不能」のトランプ氏、主張変える可能性も

服部 健司 (時事通信社編集局次長)

ドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補になると、いったい誰が予想しただろう。ほんの数カ月前まで「トランプ旋風は一過性。いずれ失速する」という見方が大勢だった。ところが予備選が始まっても旋風はやまず、失速したのは主流派を含む他候補の方。なぜ誰もが見通しを誤ったのか。ワシントンにあるシンクタンク上級研究員を務めるグレン・フクシマさんが解説した。

 

「既成政治家への不信」「格差拡大への不満」「本音で単純に語るスタイル」。こうした要素はさんざん語られているが、それに加えてフクシマさんが指摘するのは、トランプ氏のメディア活用の巧みさだ。「視聴者が聞きたがることをずばずば言う」し、話題を提供してくれるから米テレビ各局もついつい、もてはやすことになる。実は米メディアもトランプ氏をトリックスターと見なし、その過去の精査を怠ったという。おかげで同氏はスキャンダル追及を免れた。

 

トランプ現象を本気で受け止めなかったのは共和党幹部も同じ。テッド・クルーズ、マルコ・ルビオ、ジェブ・ブッシュ、ジョン・ケーシックといった他候補の面々は、トランプ氏そっちのけで非難合戦を繰り返した。これが結果的にトランプ氏を利した。フクシマさんは「共和党幹部と有権者のギャップが相当出てきた」とみる。

 

もうひとつ興味深かったのは、トランプ氏が「アメリカは予測可能であってはならない」と考え、「予測不能性」に価値を置いているという指摘だ。同盟国として迷惑な話だが、こういう人は①将来の言動を予測し難い②言うことに一貫性がなく、責任を持たない③前に言ったことを平然と変える可能性がある―という。

 

フクシマさんは民主党支持を隠していないので共和党とトランプ氏に厳しい。ヒラリー・クリントン氏については「明らかに有能。判断力と決断力があり、真剣に仕事に取り組む」と高く評価する。一方で「人をひきつける魅力はあまりない」と冷静な分析も。クリントン氏はやれること以上の約束をしない慎重な現実主義者。そのことを物足りなく感じる若者らが、熱く理想を語るバーニー・サンダース氏に希望を託したという指摘にも説得力があった。

 

20年以上の在日経験があり、日米のパーセプションギャップを肌で知るフクシマさんに日米関係も展望してほしかったが、時間切れ。その点は残念だった。


ゲスト / Guest

  • グレン・フクシマ / Glen S. Fukushima

    アメリカ / USA

    元米通商代表部日本担当部長 / Former Director for Japanese Affairs, United States Trade Representative (USTR)

研究テーマ:変わるアメリカ 変わらないアメリカ 米大統領選

研究会回数:7

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