2016年05月12日 15:00 〜 16:30 9階会見場
「変わるアメリカ 変わらないアメリカ 米大統領選」⑥渡辺靖 慶應大学教授

会見メモ

慶應大学の渡辺靖教授がトランプ現象を中心に米大統領選について分析し、記者の質問に答えた。
司会 播摩卓士 日本記者クラブ企画委員(TBSテレビ)


会見リポート

トランプ現象は一過性ではない

播摩 卓士 (企画委員 TBSテレビ報道局編集主幹)

「ブッシュに可能性がないとは思っていたが、トランプが共和党の大統領候補になることは予想していなかった」という渡辺教授の正直な告白から始まった会見は、同じく予想を外した多くの参加者が、トランプ現象なるものをどう理解すればいいのか、自問自答する場ともなった。

 

渡辺教授は、「アウトサイダーや政治的な“変わり者”に有権者が殺到する」光景は、1990年代からいくつか見られたものの、これまで多数派だった白人の減少と、アメリカ社会を支えてきた中間層の大幅な縮小が構造的な背景にあると指摘し、中間層の社会に対する寛容度の低下を利用した排外主義、孤立主義の広まりこそが“トランプ現象”の本質と見る。だとすれば、「この現象は一過性ではない。トランプが当選しなくても、トランプがうまくやったことを目撃してしまった以上、今後、第2、第3のトランプがまた出てくるだろう」と警告する。

 

厄介なのは「メディアがトランプ批判をすればするほど、逆にトランプ支持が拡大する」という現象。「メディアはワシントンの一部と思われているからだ」という分析には、ドキッとさせられる。

 

「トランプは何主義者なのかさっぱりわからないが『究極のリアリティーショー』をやっている」という渡辺教授の観察は、リアリティーショーのおもしろさに期待する人々がどんどん増えている現実を説明するのに十分、説得力がある。メディアと政治の関係は、「ワイドショー」から「リアリティーショー」にさらにフェイズが変わりつつあるのだろうか。

 

リアリティーショーの結末を予測するのは、未だ不可能。結末を見た後に、あらためて分析を聞きたい。


ゲスト / Guest

  • 渡辺靖 / Yasushi Watanabe

    日本 / Japan

    慶應大学教授 / Professor, Keio University

研究テーマ:変わるアメリカ 変わらないアメリカ 米大統領選

研究会回数:6

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