2016年04月21日 12:00 〜 13:30 9階会見場
中本和洋 日弁連会長 昼食会

会見メモ

4月1日に就任した中本和洋日本弁護士連合会会長が会見し、記者の質問に答えた。
司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

改革の本丸に切り込む決意

津山 昭英 (朝日新聞社顧問)

中本和洋日弁連新会長は「民事司法改革はほとんど進んでいない。改革をやるために会長になった」と、具体例と数字を挙げて改革の必要と方向を力説した。

 

法科大学院の開設から12年、離婚や借金などの法的トラブル解決の総合案内所として、法テラス(日本司法支援センター)が店開きをして10年、裁判員制度が始まって6年になる。この「3本の矢」は、順調とはいえないまでも受け入れられてきた。残る最大の課題は、とりわけ日弁連にとって改革の本丸、民事司法であることは衆目の一致するところだろう。中本会長は言う。

 

2009年に地方裁判所が新たに受け付けた訴訟の数が23万件を超えたが、昨年は14万件だった。このうち、サラ金相手の「過払い金返還訴訟」を除くと、ほぼ同じ9万件と増えていない。なのに、この十数年で弁護士の数は3万8千人近くとほぼ倍になった。勝訴判決をもらっても財産を隠されて8割が紙切れになる。

 

最大の障害は裁判に費用がかかること。裁判に備えた弁護士保険の普及を、損害賠償額の大幅アップを、司法予算の増額を。

 

身振り手振りを交えて、「弁護士のためでなく、市民・国民のための改革」への決意を熱く語った。成否は、弁護士による弁護士のための改革と見られないかどうかにある。

 

日弁連は、法曹人口、すなわち司法試験の合格者の数をめぐって、深刻な対立を続けてきた。政府は、目標の「3000人」に向かって合格者の数を増やした結果、事務所に「就職」できない、仕事がない弁護士もでてきた。4年前には、会長選挙をやり直す事態にまでなったが、「1500人以上」と変更され、決着した。この間、「既得権益の擁護に走っている」「内向きすぎる」と批判を浴びた。

 

その一方で、福祉の現場など困っている人に出向いて、手弁当で活躍している若手も増えている。「裁判所に出入りして、悪いことをした人や金持ちのためだけにある」のではないかという弁護士像をどこまで変えられるか。

 

工学系大学院、民間の技術研究所を経て、義父の強い薦めで法曹の世界に入った。広島出身で、「戦争は最大の人権侵害。安保法制には反対していく」とも言い切った。


ゲスト / Guest

  • 中本和洋 / Kazuhiro Nakamoto

    日本 / Japan

    日弁連会長 / President, Japan Federation of Bar Associations (JFBA)

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