2016年04月15日 16:00 〜 17:00 10階ホール
ティエリー・ダナ 駐日フランス大使

会見メモ

G7サミットを前にダナ駐日フランス大使が会見し、記者の質問に答えた。
司会 坂東賢治 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)
通訳 三宅薫子


会見リポート

オランド大統領の広島訪問は「まずアメリカに問うべき」

香月 隆之 (NHK報道局副部長)

ティエリー・ダナ駐日フランス大使による記者会見は、伊勢志摩サミットまで1か月半あまりという日程で行われ、フランス政府としてサミットの重要議題をどう認識しているかを聞く重要なチャンスとなった。

 

サミットへ向けて大使が強調したのは3点。テロ対策を協力して進めるための行動計画で合意すること、経済面で成長戦略を巡る意見交換を行うこと、そして地球温暖化を巡って昨年末に合意したパリ協定を実践するための具体的な話し合いをすることだ。このうち特にテロ対策の行動計画については、G7として強い姿勢を示すという政治的な意味合いが重要であることを強調するとともに、具体的な対策として、テロ組織の資金源対策や情報共有などが盛り込まれることへの期待も示した。

 

一方で、質疑応答で特に注目を集めたのは、サミットの際にオランド大統領が広島を訪問するかどうかについてだ。サミット開催時の広島訪問を巡っては、アメリカのオバマ大統領の動向に注目が集まってはいるが、同じ核保有国であるフランス大統領が訪問すればやはり大きな意味を持つことになる。しかし、大使はオランド大統領の訪問については予定されていないことを明らかにしたうえで、「この問題では、まずはじめにアメリカに問いかけるべきであり、フランスとしてはその答えを受けて検討したい」と述べるにとどめた。

 

興味深かったのは、隣国イギリスのEUからの離脱を巡る国民投票に関する発言だ。大使はあくまでもイギリスがEUにとどまることが望ましいとの立場を示しつつも、仮に離脱が決まった場合でもEUは立ち止まることなく、これまで通り拡大を続けユーロ圏の安定に努めるべきだとの考えを示した。その際にフランスとしてはこれまで通り、ドイツと連携をとってEUの中心としての役割を果たす決意を強調した。

 

世論調査で離脱と残留が拮抗する結果が出ているなかで、離脱に備える心構えを示したとも取れ、イギリスの国民投票を巡る状況の深刻さをうかがい知ることができる発言だったといえる。


ゲスト / Guest

  • ティエリー・ダナ / Thierry Dana

    フランス / France

    駐日大使 / Ambassador to Japan

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