2016年04月18日 14:00 〜 15:00 10階ホール
記者会見「世界人道サミットに向けて」

会見メモ

5月23、24日にイスタンブールで行われる初の「世界人道サミット」に向けて渡部正樹 国連人道問題調整事務所(OCHA)神戸事務所長、白石和子 外務省 女性・人権人道担当大使、長有紀枝 認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)理事が会見し、記者の質問に答えた。また、長JPF理事からは熊本地震の支援活動について報告があった。
また、スティーブン・アンダーソン 国連WFP日本事務所代表、河原直美 UNHCR駐日事務所副代表もそれぞれの取り組みについて補足発言した。
司会 宮田一雄 日本記者クラブ企画委員(産経新聞)
写真左から 長JPF理事、白石大使、渡部OCHA神戸所長

OCHA Japan世界人道サミットページ
OCHA
ジャパン・プラットフォーム


会見リポート

初の「世界人道サミット」へ期待

土生 修一 (日本記者クラブ事務局長)

初の「世界人道サミット」開催(5月23日、24日)を前に、国連、日本政府、民間NGOの代表者がサミットへの見解や期待を語った。出席者は、渡部正樹・国連人道問題調整事務所(OCHA)神戸事務所長、白石和子・外務省女性・人権人道担当大使、長有紀枝・認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)理事の3人。

 

会見冒頭に、長JPF理事が、発生したばかりの熊本地震に対するJPFの取り組みについて語った。 

 

加盟46団体のうち11団体がすでに救援活動を始めており、長さんは、「救援物資が拠点までは届くが、その先にはいかない事態が起きている。これは東日本大震災でも起きたこと。道路など交通事情などばかりでなく、配送や仕分けの仕組みがまだ整っていない」と指摘した。「今後は、企業と被災地をつなぐ役割など、救援組織間の連絡・調整も果たしていきたい」と語った。

 

世界人道サミットについては、サミットの事務局を務めるOCHAの渡部神戸事務所長から概要説明があった。

 

渡部さんは、「世界は今、第二次大戦以降、最悪の人道状況に置かれており、人道ニーズに供給が追い付いていない」との現状認識を示した。そのうえで、今回の人道サミットの目的として、①人道支援の理念、原則の再確認 ②改善のための効果的、具体的な政治レベルでのコミットメント ③現場での成功例などの共有を通じ新しい人道支援に生かしていく―の3点をあげ、とくに②の政治的コミットメントが中心課題になると語った。

 

白石大使は、「人間の安全保障」を重視する日本政府として、人道サミットでは、①人道支援と開発支援との連携 ②自然災害の防災対策強化 ③女性の保護とエンパワーメントの3点を重要視していると述べた。

 

長さんは、「これまで弱かったNGOと企業との連携などについて人道サミットで報告したい。また自然災害と紛争は両方とも国際的な人道問題だが、日本では自然災害は同情されるが紛争は他人事と思われ認識に大きな落差がある。サミットがこれを乗り越えるきっかけになれば」と話した。

 

日本のNGOの紛争地帯での活動に関するやり取りが興味深かった。

 

長さんは、「日本政府は国際的な人道支援をもっと進めるとの方針だが、一方で日本のNGOは(紛争地などの)危ないところに行かないように日本政府から再三言われ、大きな『足かせ』になっている。人道支援のためにはどうしても被災者の近くに行かなければならない」と訴えた。会場からも「せめて欧米NGOの活動している地域は認めてもよいのでは」との声があがった。これに対し白石大使は、「担当ではないが」と前置きしたうえで、「今後の課題だが、欧米のNGOは歴史も訓練も重ねており、日本のNGOとは違いがある」と紛争地域での日本NGOの活動には消極的だった。

 

日本人記者の紛争地取材に対する日本政府の消極的態度を想起させた一幕だった。


ゲスト / Guest

  • 渡部正樹 国連人道問題調整事務所(OCHA)神戸事務所長/白石和子 外務省 女性・人権人道担当大使/長有紀枝 認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム理事

研究テーマ:世界人道サミットに向けて

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