2016年04月04日 13:30 〜 14:30 10階ホール
ティム・ヒッチンズ 駐日英国大使

会見メモ

イギリスのヒッチンズ大使が、EU残留・離脱をめぐる国内の動きについて話し、記者の質問に答えた。
司会 福本容子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)
通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

歴史的選択に向き合う英国民

福本 容子 (企画委員 毎日新聞社論説委員)

憲法改正の時以外、国民投票を想定していない国にいると、よくまあ、これほど大きくて難しい問題を直接有権者に問う決意をしたものだと感心する。英国が欧州連合(EU)に残留する是非を問う6月23日の国民投票だ。

 

なぜキャメロン首相は、「離脱」の結論が出る危険を冒してまで国民投票に踏み切った(踏み切らざるを得なかった)のか。英国がEU内に残留するメリット、離脱が英国や欧州、世界に与える影響は? 沸いてくる数々の疑問に、ティム・ヒッチンズ駐日英国大使が会見で答えた。

 

特に印象に残ったのは次の2点である。

 

まず、EU離脱派の中に、敵をこしらえたり、分断をあおったりする大衆迎合的(ポピュリズム的)な動機はないか、という質問への回答だ。

 

大使は「ポピュリズムと民主主義の間に明確な線を引くことは難しい」としたうえで、「肝心なのは、政治家がポピュリストではない、理性的な主張を情熱をもって行うことだ」と述べた。

 

理性的な主張を、情熱的に――。英国に限らず、各国の責任ある指導者にますます求められている資質ではないか。そう思うのと同時に、反EUの世論が広がった背景として、戦後生まれが多数派になるにつれ、欧州統合の理想を熱く語れる政治指導者が少なくなったことも挙げられるのではないかと思った。

 

印象に残ったもう1点、というより、ほっとさせられたことも付け加えたい。若い英国民の間で、親欧州の立場が主流になっていると大使が明かしたことだ。そして、スコットランド独立の是非を問うた住民投票がそうだったように、歴史的重要性のある決断を迫られるとき、英国民は合理的に判断し、現状維持を選択するものだ、との指摘である。

 

約80日後に控えた英国民の一大選択に注目したい。


ゲスト / Guest

  • ティム・ヒッチンズ / Tim Hitchens

    イギリス / UK

    駐日大使 / Ambassador to Japan

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