2016年03月30日 14:00 〜 15:15 10階ホール
「チェンジ・メーカーズに聞く」③吉田浩一郎 クラウドワークス代表取締役社長 CEO

会見メモ

クラウドソーシング(仕事仲介)サイトを運営するクラウドワークス(2011年設立)の吉田浩一郎社長が会見し、記者の質問に答えた。
司会 水野裕司 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

正社員はもはや標準ではない 個人と企業むすぶ「働き方革命」に意欲

森 一夫 (日本経済新聞出身)

吉田浩一郎社長(41)のクラウドワークスが営む事業は、新種のネットビジネスである。様々な職業能力を秘めた個人と特定の業務を外注したい企業とを、インターネットによって結びつけるサービスを提供している。

 

個人は何ができるのかを、一方、企業はどのような仕事を頼みたいのかを、それぞれ同社のサイトに登録する。職種はシステム開発、デザイン、翻訳、通訳、経理代行など約200に上る。双方をマッチングさせて条件が一致すれば契約成立である。仕事が完了したら企業は依頼先の個人に報酬を支払い、クラウドワークスは一定の手数料を得るというのが、おおよその仕組みである。

 

個人で企業に電話をかけた場合、必ずと言ってよいほど「どちらの○○様ですか?」と尋ねられる。企業や団体に所属しているのが当然という扱いである。したがって、縁もゆかりもない個人に企業が仕事を直接依頼することは通常あり得ない。

 

そうした常識を覆そうというのが、同社の事業である。吉田社長は価値観の転換を目指しており、「『企業は信用できるが、個人は信用できない』を『個人も信用できる』に変える」と言う。同社のサイトを通じて仕事をすると、「発注者の企業が成果を5段階で評価する」。逆もあり評価は双方向だが、個人については累積した評価が能力の格付けになる。

 

発注側にとっては、それが仕事をこの人に任せられるかどうかを判断する材料になる。個人は実績を積み重ねることで「信用」が形作られ、「大企業の正社員」と同等の働く機会もつかめるというわけである。同社に登録する最高の稼ぎ手は「年間報酬額約2000万円の翻訳家」だそうだ。しかし、これは例外的といえる。

 

2016年9月期に同社は、企業と個人の契約総額を、前期の28億円から40億円に増やす計画だ。吉田社長が言うように「これを年収1000万円で換算したら400人。年収500万円でも800人」である。実際の登録者数は約80万人だから、単純に割り算したら平均5000円程度にとどまる。現状は「大きな市場の入り口に立ったに過ぎない」と吉田社長は認める。

 

同社は事業を始めて約4年で、2014年12月に赤字のまま東証マザーズに株式を上場した。まだ先行投資の段階にある。「正社員はもはや標準ではない」(吉田社長)との時代認識の下、掲げる事業目標は「働き方革命」と大きい。現行のサービスを進化させて、埋もれている個人の能力を狙い通り自由に生かせるようになれば、面白いことになりそうだ。


ゲスト / Guest

  • 吉田浩一郎 / Koichiro Yoshida

    日本 / Japan

    クラウドワークス代表取締役社長 CEO / CEO, CrowdWorks Inc.

研究テーマ:チェンジ・メーカーズに聞く

研究会回数:3

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