会見リポート
2016年03月29日
15:00 〜 16:00
9階会見場
ダニロ・テュルク 前スロベニア大統領
会見メモ
次期国連事務総長選に出馬表明しているテュルク前スロベニア大統領が会見し、記者の質問に答えた。
司会 土生修一 日本記者クラブ事務局長
通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)
会見リポート
目指すのは次の国連事務総長
松尾 圭介 (時事通信社外信部編集委員)
来年の1月1日、世界は潘基文氏に代わる新しい国連事務総長を迎える。熾烈な後任レースが既に始まっている。旧ユーゴスラビア構成国スロベニアの大統領だったテュルク氏がこの時期に来日したのも、事務総長選での支持を訴えるためだ。テロ対策から難民問題まで、会見ではよどみなく、一つ一つポイントを挙げて質問に答えた。明日からでも事務総長職を始められそうだ。
ただ、テュルク氏には本人の実力とは全く関係のない逆風が吹いている。世界中の報道が「次の事務総長は女性」と臆測し、ブルガリア出身の国連教育科学文化機関(ユネスコ)のボコバ事務局長や、クロアチアのプシッチ外相ら、女性候補にばかり注目が集まっている。昨年9月、国連総会までが「女性事務総長候補の擁立検討を加盟国に促す」と呼び掛けたくらいだ。
過去の事務総長は①リー(ノルウェー、在任1946~52年)②ハマーショルド(スウェーデン、53~61年)③ウ・タント(ビルマ、61~71年)④ワルトハイム(オーストリア、72~81年)⑤ペレス・デクエヤル(ペルー、82~91年)⑥ガリ(エジプト、92~96年)⑦アナン(ガーナ、97~2006年)⑧潘基文(韓国、07年~)と8人全員が男。国連は昨年9月、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を打ち出し「全女性に対するあらゆる形態の差別、暴力をなくす」と訴えているが、まずこのトップの男臭いのをどうにかしないといけないというわけだ。
一方で出身国は、北欧だけ2人だが、残りは東南アジア、西欧、南米、中東、アフリカ、東アジアから順に出ている。「次は東欧だ」と期待は高い。スロベニアは資格十分と言える。
テュルク氏は1992年から8年間、スロベニアの国連担当大使を務めた。2000年からはアナン事務総長の下で5年間、事務次長補(政治安全保障担当)として都合13年間、国連を内部から見詰めてきた。会見でも、こうした経験を基に事例を振り返り、即戦力を印象付けた。日本政府は次の事務総長に誰を推すか「人物本位」ということで、まだ煙幕を張っている。
ゲスト / Guest
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ダニロ・テュルク / Danilo TÜRK
スロベニア / Slovenia
前大統領 / Former President