2016年03月25日 13:00 〜 14:00 10階ホール
「3.11から5年」 ⑮宮野廣 日本原子力学会廃炉検討委員会委員長

会見メモ

日本原子力学会廃炉検討委員会委員長を務める宮野廣 法政大学客員教授が会見し、記者の質問に答えた。
司会 服部尚 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

求められる「技術ガバナンス」 新知見の取り入れ方が課題

服部 尚 (企画委員 朝日新聞社編集委員)

原子力学会で、原発事故の頻度や影響の大きさを予測するリスク評価に取り組み、メーカー出身者としてプラントにも精通している。東京電力福島第一原発事故の廃炉対策を検討する委員会の責任者でもある。そうした専門家が、再稼働を進める、日本のいまの原発安全対策をどうとらえているのか、聞いてみたいと思っていた。

 

会見では福島第一原発事故について、2000年ごろに、すでに今回の津波の襲来の予見につながるかもしれない取り組みが土木学会で始まっていたことを踏まえ、「新しい知見をどう取り入れていくかが課題になった。新知見とは何なのか、判断するのは学術側の(私たちの)責任でもある」と指摘した。

 

学術の世界では、日々、新しい知見を示す多くの論文が出てくる。なかには結果して誤りだったとわかるものもある。そうしたなかで、何を技術対策として取り入れていくべきか、事故後に科学界に課せられた使命でもあるようだ。

 

東北電力女川原発が間一髪で、メルトダウンのような自体をまぬがれたのは、当時の経営者らが、もう少し安全側に機器や設備を置いておこうとする「技術ガバナンスがあった」からだと分析した。そうした事例を考えれば、福島第一原発事故は決して、防ぐことができなかった事故ではない。東北電力のような取り組みが、福島第一原発事故前でも、もっと進めることができたはずだった。「設計で大丈夫だと思っていても、その設計を越える過酷事故への対策への認識は甘かった。安全文化の情勢や、想定外の事態への備えに真摯に取り組んでこなかった」と振り返った。

 

原子力の利用については、今後の途上国でのエネルギー消費の増大や、地球温暖化対策をにらみ、「原子力はやって行かざるを得ない。そのためにも安全確保への努力を進めていかなければならない」とくぎを刺した。事故を防ぐ「設計」、事故が起こった場合に被害の拡大を防ぐ「マネジメント」、そして、周辺環境への放射能の影響などが及ぶ恐れが出た場合の住民避難などの「防災」という3つの側面で、原子力規制委員会などが統一的に取り組み、説明責任を果たしていく必要性も訴えた。


ゲスト / Guest

  • 宮野廣 / Hiroshi Miyano

    日本 / Japan

    日本原子力学会廃炉検討委員会委員長 / The Atomic Energy Society of Japan

研究テーマ:3.11から5年

研究会回数:15

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