2016年03月02日 13:30 〜 15:00 10階ホール(AC)
「どうみるマイナス金利」若田部昌澄 早稲田大学教授 / 加藤出 東短リサーチ社長

会見メモ

早大の若田部教授と日銀ウォッチャーの加藤氏がマイナス金利の影響と今後について意見を交わし、記者の質問に答えた。
司会 播摩卓士 日本記者クラブ企画委員(TBSテレビ)

左=加藤氏、右=若田部氏


会見リポート

金融政策の論点、浮き彫りに

軽部 謙介 (企画委員 時事通信社解説委員長)

日本銀行が導入したマイナス金利。欧州に例があるとはいえ、日本では前代未聞のこの政策をどう考えればいいのか。評価は一様ではない。登壇いただいたお二人の意見にも開きがあり、話を進めるうちに論点が浮き彫りになった。

 

根底には、黒田東彦日銀総裁が2013年4月に導入した「異次元緩和」に対する姿勢の差がある。加藤さんは「うまく機能していない」という立場で、「突破口を切り開こうとしたのがマイナス金利」とみる。これに対して若田部さんは、現政権の経済政策、アベノミクスの中で金融政策が最も効いていると主張。今回の措置も「これだけで(全体が)うまくいくとは思わない」としながらも「今までの延長線にあり、その補完措置」と肯定的だった。

 

マイナス金利導入の影響について若田部さんは、「期間の短いものから長いものまでイールドカーブ(債券の利回りと償還までの期間の関係を表す曲線)は押し下げられている」。金融機関の経営が打撃を受けるという懸念についても「影響は限定的」と断じた。

 

また加藤さんが、太平洋戦争中の日本軍に例え「短期決戦でやろうとしてもできなかった。途中からどうやって講和に持ち込むのかという戦略の転換が必要になったのに、ずるずる転換しなかった」として、日銀が2%の物価目標達成にこだわり過ぎる危険性を指摘。若田部さんも予想インフレ率が低下していることなどをあげて「アベノミクスの原点に戻って再起動させる必要がある」と述べ、デフレ脱却をどう進めていくのか再確認が必要との認識を示した。

 

話は財政を含めて経済政策全体に及び中身の濃い90分となった。時間の関係で紹介できなかったゲストブックには、「デフレ脱却の最後のチャンスを生かす経済政策を」(若田部さん)「北風より太陽を」(加藤さん)と記されていた。


ゲスト / Guest

  • 若田部昌澄 早稲田大学教授 / 加藤出 東短リサーチ社長 / Masazumi Wakatabe, Professor, Waseda University / Izuru Kato, The Totan Research Co., Ltd.

    日本 / Japan

研究テーマ:どうみるマイナス金利

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