2016年03月02日 15:00 〜 16:00 10階ホール(B)
グランディ 新国連難民高等弁務官 会見

会見メモ

1月に就任したグランディ国連難民高等弁務官が会見し、記者の質問に答えた。
司会 秦野るり子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)
通訳 藤岡美恵子
UNHCR


会見リポート

難民危機の解決に日本の役割を期待

粟村 良一 (共同通信社客員論説委員)

「就任早々日本を訪れることができ大変うれしく思います」。1月に就任して早々の訪日は日本政府のUNHCR、難民に対する持続的な支援に感謝するのが目的という。安倍首相はじめ政府、関係者と面会した。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)事務局長など、30年以上国際協力に従事した経験豊かな指導者だ。シリア難民の危機など困難な状況をチャンスに変えようと、意欲的な抱負を明快に力強く語ってくれた。

 

世界の難民、国内避難民、無国籍者の数は7000万人を超えた。特に中東シリアの内戦でこの5年間で1100万人以上が強制的な移動を余儀なくされた。国内避難民が650万人。難民は470万人で大半が近隣諸国にいる。

 

「昨年EUは欧州全体で難民受け入れの割り当てを決めたが、実際には実施されていない。その結果、各国が互いに連携せず独自の対応策を取りはじめ混乱を深めています」

 

ではどう対応すべきか。「何より大切なことはシリアの平和達成のためにもっとエネルギーを注ぐことです」。戦闘停止がその第一歩だ。「一番大切な対応策は、紛争に政治的な解決策を見いだすことです」

 

一方で、欧州にヨルダン、レバノン、トルコから直接難民を受け入れてほしいと要請する。「多くの人がボートで危険を冒して欧州に行こうとしている。それに代わる手段を与えてほしい」「何とかして合法的な正規のルートで入れるような代替策を与えてほしいと要請しているのです」

 

「代替策は恒久的である必要はない。奨学金を出す、仕事を斡旋する、家族の再会を認めるなど、各国の状況のなかでできることをする」。実情に合った柔軟な考え方だ。

 

日本の対応はどうか。「個人的な見解」と断った上で、「日本は大変信頼されているアクターです。他国のようにアグレッシブな政治的アジェンダを推進する国と見られていない。日本は人道的分野でも多額の資金を提供するドナー国、JICAの事業などを通じて開発の分野でもよきパートナーだとみられている」

 

その日本は今年、国連安保理の非常任理事国でG7の議長国だ。「今年は日本がこのような役割を大変意義深い形で果たす、さまざまなチャンスがある年です」と言う。5月のG7では難民問題も取り上げられる。

 

「大変な危機の年だが、同時にチャンスでもある。さまざまなイベントや会議が予定されている。日本が(NGOなどの)素晴らしい力を組織して、難民状況の解決に向けて大きな役割を果たせるよう願っています」と、最後に期待を寄せた。


ゲスト / Guest

  • フィリッポ・グランディ / Filippo Grandi

    国連難民高等弁務官 / UN High Commissioner for Refugees

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