2016年02月18日 15:00 〜 16:15 9階会見場
エジプト人記者を囲む会

会見メモ

カタールのメディア企業が2015年1月に設立した「アララビ・テレビジョン・ネットワーク」のモハメド・エルメンシャウィ・ワシントン支局長が会見し、記者の質問に答えた。
司会 土生修一 日本記者クラブ事務局長
通訳 西村好美(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

CNNになれなかったアルジャジーラ 新中東テレビは取って代われるか?

原田 健男 (山陽放送出身)

会見したモハメド・エルメンシャウィ記者はエジプト人で、去年1月に設立された新しいカタールのテレビ局「アララビ・テレビジョン・ネットワーク」のワシントン支局長だ。アララビTVは、混乱の中東にあって名をはせた「アルジャジーラTV」と同じカタールの王族が財政支援しているといわれるテレビ局である。

 

エルメンシャウィ支局長はまずIS・イスラム国について「指導者のアルバグダディはモハメットの後継者であると主張し、かつてイスラム帝国の中心地だったバグダッドの出身であることも強調。国境をなくしカリフ統治を復活するとして、不正義がはびこっている中東で人が集まりやすくなっている」と分析。また同支局長は「ISは、旧イラクの軍・諜報部の将官の採用も行っており、単なるテロ組織以上の存在で軍事的に戦略を持っている。支配地域にいる900万人を支配しており、今は空爆などで押され気味だが、近い将来にISは軍事的には敗北しても、思想的にはそうはならないだろう」とIS掃討の難しさを指摘した。

 

また、アメリカにおけるアラブ系テレビ事情については「アルジャジーラ・アメリカは近く閉鎖される。アルジャジーラは報道の世界で大きな成功を収めてきたが、アメリカでもCNNやFOXのように市場で影響を与えられると誤って考えたのではないか。アメリカで⦅ビンラディンの放送局⦆というイメージがつくとは思っていなかったに違いない」と評した。

 

アルジャジーラTVは、アフガニスタン戦争やイラク戦争で現地から生々しいリポートを送るなどして世界から注目されたが、アメリカ兵の遺体を放送したり、9・11の首謀者オサマビンラディンのメッセージを独占的に流すなどしてアメリカで反感を買った。また中東でも「アラブの春」で、イスラム原理主義団体を支援、また国によって反体制派を支持したり、逆に批判したりするなど主張に一貫性を欠いたところもあり、アラブの世俗派市民からもサウジアラビアやクウェートなど湾岸諸国からも反発を受けている。

 

このため2013年に父親の跡を継いだ35歳のタミール首長は、カタール並びにアルジャジーラTVのイメージ改革に着手したといわれており、会見したエルメンシャウィ支局長の所属する「アララビTV」を発足させた。アルジャジーラの失速を乗り越えてCNNのように世界中に視聴者を持ち、中東だけでなく世界に影響力を持てるテレビになれるかどうかが問われている。


ゲスト / Guest

  • モハメド・エルメンシャウィ / Mohamed Elmenshawy

    エジプト / Egypt

    アララビ・テレビジョン・ネットワーク ワシントン支局長 / Washington Bureau Chief for Alaraby Television Network

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