2016年01月27日 15:00 〜 16:30 10階ホール
著者と語る『フィナンシャル・タイムズの実力』 在英ジャーナリスト 小林恭子氏

会見メモ

在英ジャーナリストの小林恭子氏が著書『フィナンシャル・タイムズの実力』について話し、記者の質問に答えた。
司会 福本容子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

デジタル化と国際化 FT買収の意味

宮坂 一平 (時事通信社デジタルメディア事業本部長)

昨年7月の発表から半年。日本経済新聞社による英有力経済紙フィナンシャル・タイムズ・グループ(FT)買収の意味を、英国の視座からひもといたという点で、価値ある1時間半だった。

 

というのも、1600億円と言われる買収額をめぐる議論はともかく、日経が説明するキーワードのデジタル化とグローバル化を真に理解するには、FTと英メディアの現状について知る必要があったからだ。

 

小林氏は、英国でも新聞の発行部数が急減しており、2005年に1200万部だった全国紙が、15年秋には684万部まで落ちたことを紹介。新聞も放送も、デジタルコンテンツを提供する会社に変化してきていると述べた。

 

FTは05年に就任したバーバー編集長の下で、デジタル化とグローバル化を強力に推進し、紙の購読者数20万に対し、デジタルは55万に上っているという。

 

「デジタルファーストは欧州のトレンド。電子が主、紙は従です」「FTは、デジタルファーストからオーディエンスファーストへ。つまり、いかに読者に届けるかを重視しています」

 

テキストのほか、インフォグラフィックスや動画を使い、どのソーシャルメディアやプラットフォームにニュースを流すのか。ニューズルームの中心には、読者のアクセス状況を測定するチームを置いているというのだから、従来の新聞編集局とは様変わりだ。

 

買収による日経側のメリットについては、アジアと欧米という地域的補完関係、FTを通じた英語による日本の情報発信、お金では買えないブランド価値などを挙げた。

 

FTの戦略は、昨年秋に社長がクラブで会見した米紙ニューヨーク・タイムズのそれと重なって見える。スマートフォンの急速な普及で、メディアを取り巻く環境は激変しているが、これを機に、成長への本格的なグローバル競争が始まる。


ゲスト / Guest

  • 小林恭子 / Ginko Kobayashi, Journalist

    日本 / Japan

    在英ジャーナリスト / Journalist

研究テーマ:『フィナンシャル・タイムズの実力』

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