2016年01月19日 15:00 〜 16:00 10階ホール
「3.11から5年」②野田武則 岩手県釜石市長

会見メモ

野田武則 釜石市長が会見し、記者の質問に答えた。
司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

復興の歩みを実感できる年に

吉田 憲司 (産経新聞副編集長)

「春の星こんなに人が死んだのか」。会見で、岩手県釜石市在住の高校教諭で俳人の照井翠さんの句を紹介したのは、東日本大震災がもたらした被害がいかに大きかったかをあらためて思い出してもらうためだったのだろう。釜石市の死者・行方不明者は1千人を超える。「大変悲惨な状況だったことを忘れてはならない」と語る姿に震災を風化させてはならないとの強い思いがうかがえた。

 

あの日からまもなく5年。まだまだ課題は残るものの、釜石市では平成28年度中に復興公営住宅は約9割、自立再建を目指す被災者のためのかさ上げ工事も約8割は完成する見通しという。「復興の歩みを実感できる年にしたい」。この言葉には復興が着実に進んでいることへの自信が垣間見えた。

 

問題はこうした生活基盤が整った後、新たな釜石をどう作り上げるのか。地元企業の再建や新たな企業の立ち上げ、「橋野鉄鉱山・高炉跡」の世界文化遺産登録を背景とした観光振興…。既に実を結びつつあるのが企業誘致で、復興道路の整備に着目した中国の太陽光パネル製造販売企業が釜石市に物流拠点の建設を進めていることを紹介した。

 

そして3年後、釜石市でも開催されるラグビーワールドカップ。建設されるスタジアムについて大会終了後は「サッカーなど他のスポーツやコンサートにも利用できるようにしたい」。スタジアムを起爆剤として三陸全体の底上げにつなげたいという。三陸沿岸は将来的に大幅な人口減少が想定されており、沿岸の各自治体が連携して三陸全体の振興策に取り組む必要性を強調した。

 

会見を通じて印象的だったのは、被災者らとの合意形成に苦心したエピソードを明らかにするなど、被災地の実情を率直に語る姿だった。「不撓不屈」を掲げる野田武則市長。「新生・釜石」「新生・三陸」に向け、その手腕に期待したい。


ゲスト / Guest

  • 野田武則 / Takenori Noda

    日本 / Japan

    岩手県釜石市長 / Mayer, Kamaishi City

研究テーマ:3.11から5年

研究会回数:2

ページのTOPへ