2016年01月08日 00:00 〜 00:00
大阪文楽ツアー 人間国宝の嶋大夫さん引退公演観劇など

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会見リポート

観ました 文楽の表と裏

塚田 博康 (東京新聞出身)

1月の大阪・国立文楽劇場は、太夫(義太夫を語る人)でただ一人の人間国宝である八代目豊竹嶋大夫師の引退披露公演が行われた。

 

日本記者クラブの大阪文楽ツアーは今回で2度目だが、第1回の一昨年4月は人間国宝で文化勲章受章者の竹本住大夫師引退披露公演で、文楽にとっての大きな節目に立ち会うツアーが続いた。

 

1月8日には夜の部の「国性爺合戦」に先立って、文楽を裏で支えている方たちの活動を拝見した。

 

文楽人形のキモは首だろう。人形師の村尾愉さんによると、大阪大空襲で多くが焼失したが、それでも現在およそ20種類300以上あり、なかには江戸時代後期の作まで含まれているという。「日高川入相花王」の清姫の美しい顔が、一瞬で眼をカッと見開き、口が耳まで裂ける。細工の精妙さにはまさに、びっくりぽん。

 

人形の髪はみなカツラで、髪型は男性80、女性40種ほど。結髪は床山の担当だ。女性床山第1号の高橋晃子さんが教えてくれたところでは、ほとんどが人毛だが、ヤクのしっぽを使う部分もある。最近、外国でも女性の髪が短くなってきて毛の入手が容易ではないそうだ。

 

もう1つ大切なのが衣装。担当の米田真由美さんによると、公演の3、4カ月前から制作にかかる。人形遣いの好みで着物の襟を太めにしたり細くしたり、同じ役の人形でも微妙に違う。着付けは操りやすいように人形遣いが自分ですると聞いた。

 

9日は昼の部で、嶋大夫師引退披露の挨拶(といっても、歌舞伎と違ってご本人は一言もしゃべらない)や「関取千両幟」などが演じられた。

 

開演の前に人形遣いの吉田幸助さんに舞台裏を案内していただいた。芝居の舞台と違って、人形遣いの足が見えない「船底」といわれる構造や、迅速な舞台転換の仕掛けなど文楽の裏表を堪能した。大物が相次いで引退したが、若い世代も育っており、この節目も必ず乗り越えるだろう。


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研究テーマ:人間国宝の嶋大夫さん引退公演観劇など

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