2015年12月17日 15:30 〜 16:45 9階会見場
ジュデ ヨルダン副首相兼外相 会見

会見メモ

外務・移民相も兼務するジュデ大臣が会見、シリア難民の受け入れについても話し、記者の質問に答えた。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
通訳 宇尾真理子(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

地殻変動の中東を内側から語る

杉田 弘毅 (企画委員 共同通信編集委員室長)

戦火が絶えない中東の中で、比較的安定しているヨルダンは記者にとってオアシスのような存在だ。そんな安定感を持つナーセル・ジュデ副首相兼外相には、普段考えている中東に関する質問をじっくりとぶつけることができ、示唆に富む会見だった。

 

中東は地殻変動のさなかにある。アラブの春の挫折や「イスラム国(IS)」の横行、難民や国内避難民の悲劇という動きだけでない。米国の力の衰退、ロシアの復帰、そしてイランの存在感というパワーバランスの変化に見舞われている。

 

親米国でスンニ派主体のヨルダンは、ロシアとイランの勢力拡張をどう見ているのか。「ISの問題の解決にはロシアが鍵を握る、とヨルダンはずっと言ってきた」とロシアの関与を歓迎する一方で、イランについては明解な答えがなかった。シーア派のイランに対する警戒心を感じさせた。

 

シリアのアサド大統領の将来。「関係国の間で政治和解プロセスについて協議しており、その中で決まっていく」という穏当な答えだ。アサド氏亡き後の、予想されるシリアの混乱は隣国ヨルダンにとって悪夢だろうから、本心はアサド氏残留だろう。

 

IS壊滅に空爆だけで効果があるのか。「地上攻撃は不可欠だ。だが、それを担う部隊はシリア人であり、イラク人のものであるべきだ」。米国が地上軍を送る気がないのだから、ほかには手がない。

 

シリアは今の統一国家を維持できるのか、アサド政権派、クルド人、スンニ派と3分割されるのではないか。

 

「シリアとイラクの共通点は、スンニ派が独占的な支配地域を持っていないことだ。違う点は、イラクはまだ3つの勢力が並立しているが、シリアはさまざまな民族が乱立する」

 

最後にヨルダンは140万人のシリア人難民を現在受け入れていると強調した。シリアが分裂すれば、さらに事態は混乱し隣国のヨルダンには多くの難民の殺到が予想される。遠い日本から、中東をウォッチするのとはまったく異なる迫真さを感じさせた。


ゲスト / Guest

  • ナーセル・ジュデ / Nasser Judeh

    ヨルダン / Jordan

    副首相兼外相 / Deputy Prime Minister and Minister of Foreign Affairs and Expatriates

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