会見リポート
2015年12月15日
15:00 〜 16:30
9階会見場
中島岳志 北海道大学准教授「戦後70年 語る・問う」(41)
会見メモ
政治学者の中島岳志 北大准教授が「保守は大東亜戦争を肯定できるのか」というテーマで話し、記者の質問に答えた。
司会 星浩 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)
会見リポート
「保守」とは言えない自民党政治
大西 直人 (西日本新聞東京駐在論説委員)
「リベラル」と「保守」は対立する政治概念とみられがちだ。私自身もそう考えていた。リベラルと保守と聞けば、自民党のハト派とタカ派という対立図式がすぐに思い浮かぶ。しかしリベラルと保守は本来、相手への寛容で軌を一にするとして「リベラル保守」を自任する中島岳志さんは「保守の概念がインフレ状態になり、定義があいまいになっている。保守とは復古でも反動でもない。長年のフィルターにかけられた慣習や良識、伝統を通した永遠の微調整、漸進的改革である」と指摘し、私の単純な思い込みを打ち砕いた。
その上で「保守は大東亜戦争を肯定できるのか」と問いかけた。戦後70年。最近の保守論調への反論であり、保守の定義が揺らいでいる現状を分かりやすい形で示したのだろう。「八紘一宇で世界統合とか大東亜共栄圏といった考えは保守からは生まれない」と断じた。
中島さんが取り上げたのは戦争経験者の田中美知太郎、竹山道雄、山本七平という3人の保守論壇人。プラトン研究者の田中は、自己正当化のために国体論を振りかざした軍閥に嫌悪感を持った。「ビルマの竪琴」で知られる竹山は、左右双方の全体主義に危機感を抱いた。フィリピン戦線に従軍した山本は「時代を支配していたのは軍部ではなく、空気だった」と論じたという。
そこで気になるのは、戦後政治の大半をリードしてきた自民党だ。中島さんは「自民党政治が保守主義に基づいているのか怪しい」とみる。かつての自民党は「再配分の政治だった。実質は社会民主主義的。それが政治家と業界の不透明な結びつきで行われた」ことは間違いない。では「単色」になった現在の自民党はどうか。「政治改革で否定された再配分をなくした」自民党もやはり保守とはいえないだろう。弱者、少数派、異論への寛容はないのだから。
ゲスト / Guest
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中島岳志 / Takeshi Nakajima
日本 / Japan
北海道大学准教授 / Associate Professor, Hokkaido University
研究テーマ:戦後70年 語る・問う
研究会回数:41