2015年12月15日 13:00 〜 14:30 9階会見場
福井健策 弁護士 シリーズ「TPP」(4)

会見メモ

著作権、知的財産に詳しい福井健策弁護士が「TPPと世界知財戦~これからの著作権法リフォームを読む」というテーマで話し、記者の質問に答えた。
司会 杉尾秀哉 日本記者クラブ企画委員(TBSテレビ)


会見リポート

著作権前倒し立法は愚かな選択

白水 忠隆 (読売新聞出身)

今回のTPP合意で、アメリカは知財分野に限れば、「欲しいものは、ほぼ全部取った」というのが福井さんの見解だ。海外特許・著作権使用料は15.6兆円(2013年、世界銀行調べ)と、農産物や自動車をしのぐ最大の輸出分野で、アメリカが勝利し、日本は譲った。日本の国内法やこれまでの裁判文化とは違う制度を導入することになった。

 

特に影響が大きいのは、著作権などの保護期間の延長、著作権侵害の非親告罪化、法定賠償金の導入の3つだという。

 

古い著作物の権利処理は今でも困難で、権利者が不明の「孤児作品」問題が深刻で大量デジタル化や創作活動を困難にしているが、権利期間が延びることで権利処理の壁が続くことになる。

 

同様に、非親告罪化も、過去の作品の2次利用などを難しくする懸念がある。大筋合意では、「商業的規模の海賊版」や「市場での収益性に大きな影響がある場合」に限定する内容になっていが、立法の段階で、刑罰の対象を限定する必要があると強調した。最もインパクトが大きいと心配されるのが、法定賠償金の導入。これまでは、実損害分のみの賠償しか認められないため、ほとんど訴訟に至らなかったが、この制度が導入されると、知財訴訟が増加し、ビジネスが委縮する心配があるという。

 

福井さんはこうした問題点を列挙し、著作権法の改正には日本に合った柔軟な法制度とすべきだと主張する。だが、政府はTPP条約承認と同時に、来年の通常国会で著作権法の改正を前倒し立法しようとしている。アメリカでも著作権の保護期間の部分短縮や法定賠償金の見直しを求める声があるほか、コンテンツビジネスの世界の変化も目まぐるしい。こうした状況を考慮せず、条約発効前に、前倒し立法するのは、愚かな選択だと断言した。


ゲスト / Guest

  • 福井健策 / Kensaku Fukui

    日本 / Japan

    弁護士 / Attorney-at-Law, Admitted in Japan and State of New York

研究テーマ:TPP

研究会回数:0

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