2015年12月07日 15:00 〜 16:30 10階ホール
工藤年博 政策研究大学院大学教授 研究会「ミャンマー」 総選挙と今後の見通し

会見メモ

政策研究大学院大学の工藤年博教授が、国民民主連盟(NLD)が勝利したミャンマー総選挙の分析と今後の見通しについて話し、記者の質問に答えた。
司会 秦野るり子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

ミャンマー国軍とスーチー政権

藤川 大樹 (東京新聞外報部)

長くミャンマー情勢をウオッチしてきた第一人者にとっても、国軍がアウンサンスーチー政権の樹立を容認したことは「驚きだった」という。

 

11月8日投開票の総選挙では、スーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)が491議席中390議席を獲得し、地滑り的な大勝を果たした。スーチー氏は総選挙後、ミンアウンフライン国軍司令官に続き、旧軍事政権トップで、民主化運動を弾圧した宿敵のタンシュエ氏と会談。報道によれば、タンシュエ氏はスーチー氏を「将来のリーダー」と認め、新政権への協力を約束した。

 

総選挙の「影の主役」は紛れもなく国軍だった。

 

2008年に制定された現行憲法は、国軍司令官に国防・内務・国境の3大臣の任命権を持たせるなど、国軍の政治関与を認めており、安定した政権運営には国軍の協力が不可欠。「『国軍は民主化を支持し、NLDは国軍の政治的特権や経済利権に切り込まない』という暗黙の了解があるのだろう」。国軍がスーチー政権の容認に傾いた背景を、こう分析する。

 

ただ、国軍の支持を得たとしても、新政権が直面する課題は多い。

 

現行憲法下では、外国籍の家族を持つスーチー氏は大統領になれず、代わりに名前が挙がるティンウーNLD名誉顧問ら候補者は正直、決め手に欠ける。NLDが総選挙で掲げたマニフェスト(政権公約)は具体性に乏しく、政策には不透明感が漂う。

 

新政権は人材と経験の不足を補うため、過去の確執を乗り越え、テインセイン政権の経験者を含めた幅広い人材を登用できるのか。また、政策を立案・実行する官僚と信頼関係を築けるのか。歴史的な転換期にあるミャンマーからは、まだ目が離せそうにない。


ゲスト / Guest

  • 工藤年博 / Toshihiro Kudo

    日本 / Japan

    政策研究大学院大学教授 / Professor, National Graduate Institute for Policy Studies (GRIPS)

研究テーマ:ミャンマー

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