会見リポート
2015年11月06日
13:30 〜 15:45
10階ホール
試写会「海難1890」 日・トルコ合作映画(2015年)
申し込み締め切り
会見リポート
日本・トルコ合作 2つの実話が紡いだもの
真田 正明 (朝日新聞論説委員)
美しい実話を脚色も加えて、さらに美しく描いた。感動と共感の仕掛けが満載である。
1890年、日本を親善訪問したオスマン帝国の軍艦エルトゥールル号は帰途、暴風雨に遭い、和歌山県の大島樫野崎で座礁し、機関が爆発して沈没する。死者は500人を超え、助かった乗員は69人。大勢の外国人が遭難するという、明治維新から20年余りの日本にとって経験のない事故だった。
映画は、大島に住みついた医者とその娘を中心に、遭難したトルコ人将兵を地元民がいかに手厚く救護したかを描いていく。
荒れた海に飛び込んで、沈みかけた士官を引き上げた青年。その士官に心臓マッサージを施す医者の娘。遭難者の冷えた体は村人が裸になって温め、漁に出られず食料に困るなか、最後の鶏まで焼いて食べさせるのだった。
上映時間の3分の2余りを過ぎたところで場面は1985年に切り替わる。イラン・イラク戦争下のテヘランである。
イラクが無差別攻撃を始める時間が迫るなか、日本は救援機を出せない。取り残された日本人居住者のためにトルコが旅客機を派遣する。
空港で、自国の救援機に乗れずに不満を爆発させるトルコ人をトルコ大使館員が鎮める。群衆は日本人のために搭乗口への道を開ける。
試写会にはアフメト・ビュレント・メリチ駐日トルコ大使も出席して、あいさつした。安倍晋三首相とエルドアン大統領の全面支援でできた映画である。友情物語の背景には、それを利用したい政治の影もちらつく。
映画には出てこないが、この海難は勃興期にあった日本の新聞にとって速報競争の嚆矢となり、義援金募集のイベントともなったという。美談はそうして消費されていく。
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海難1890