2015年11月02日 16:00 〜 18:30 10階ホール
試写会「放浪の画家 ピロスマニ」

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会見リポート

「百万本のバラ」の清貧

深田 実 (東京新聞論説主幹)

「放浪の画家ピロスマニ」と聞いても知る人は少なかろう。ためしに百科事典、美術事典の類を探したが、その名は見当たらず、ようやく近刊の人名辞典に10行ほどの記述を見つけた。

 

概要、こうある。

 

〈1862・5?~1918・4・7?グルジアの画家。美術教育は受けず、チフリス(現トビリシ)で居酒屋などのために看板や絵を描きながら放浪。生活、歴史、自然に題材をとり、静的で量感のある人物・動物を描いた。素朴派の画家としてロシアで注目されたが貧しいまま死去。《百万本のバラ》の歌詞のモデル〉(岩波世界人名大辞典)

 

百万本のバラから加藤登紀子さんの歌声を思い出された方は、純情質朴の絵描きを想起されよう。それでもちろん間違いはないし、映画は貧しい絵描きの酒場で見初めた踊り子マルガリータへの報われぬ愛も、この画家の生き方さながらに淡々と描く。

 

だが驚くのは、この映画は実は半世紀ほど前の古い製作であるということだ。1969年グルジア(ジョージア)映画、ギオルギ・シェンゲラヤ監督、カラー87分。74年シカゴやイタリアの国際映画祭賞に輝き、78年日本公開時には文化庁芸術祭優秀賞。

 

だからみた人はいる。しかし、みていない人、もう一度みたい人のために自らが絵本作家で岩波ホール勤務のHさんが引っ張り出してきた。ピロスマニにほれ抜いて新婚旅行にグルジアを選んだつわものだ。

 

なぜ今、再映なのか。Hさんのほれぶりは別として、みればこんな言葉を思い出す人もいるだろう。古言にいわく、濁富は常に憂い、清貧は常に楽しむ。日本人には無名でもジョージア人ならだれもが知る偉人の物語である。


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  • 放浪の画家 ピロスマニ

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