2015年10月20日 14:00 〜 15:00 9階会見場
甘利明 経済財政・再生担当相 会見

会見メモ

TPP担当の甘利明大臣が会見し、記者の質問に答えた。
司会 軽部謙介 日本記者クラブ企画委員(時事通信)


会見リポート

垣間見えたルールメーカーとしての自負

瀬能 繁 (日本経済新聞編集委員兼論説委員)

日米など12カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)が大筋合意に達してから2週間あまり。閣僚会合での立役者の1人として、「アジア太平洋地域の繁栄を約束する枠組み」と成果を大いに語った。

 

TPPによって各国が関税を撤廃する品目の比率を示す「関税撤廃率」をみると、日本は95%だ。この評価も立場で大きく異なる。

 

日本がこれまで結んだ経済連携協定(EPA)の関税撤廃率を大きく上回る。牛肉・豚肉など重要5項目も一部は関税削減に応じるため、「聖域を守っていない」との批判が出そうだ。

 

その一方で、日本以外の11カ国の関税撤廃率はすべて99~100%なので、自由貿易重視の立場からは「日本は低すぎ」との不満がある。

 

甘利氏は関税をできるだけ撤廃する「高い野心」と「重要品目をしっかりと守る」という2つの要求を前に「どこで接点を持つかが非常に苦しかった」と振り返った。

 

「一番衝撃を受けた」という舞台裏の一コマも明らかにした。7月の米ハワイでの閣僚会合。途上国で関税撤廃に後ろ向きとみられていたベトナムが途中で「関税の100%撤廃」のカードを切ってきた。「振り返ると(日本の)後ろに誰もいない状況になった」と受け止めた。ベトナムの閣僚に「こんな決断をよくできたね」と水を向けると、「議論はあったが、国運をかける決断をした」と打ち明けられたという。

 

語気を荒らげたのは、中国への対応を聞かれたときだった。「予見可能性の高いルールにあわせてくれればどうぞご参加ください」と突き放した。

 

TPPはその先進的な内容から、実質的に世界標準となる貿易・投資ルールとなる可能性を秘める。そのルールに従うか否かのどちらかだ――。そんなルールメーカーとしての強い自負が垣間見えた瞬間だった。


ゲスト / Guest

  • 甘利明 / Akira Amari

    日本 / Japan

    経済財政・再生担当相 / Minister in charge of Economic Revitalization, State for Economic and Fiscal Policy

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