2015年10月28日 00:00 〜 00:00
岡山 里山・里海プレスツアー

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会見リポート

地方再生のヒントを探る

上田 千秋 (東京新聞社会部)

ベストセラー『里山資本主義』と『里海資本論』(いずれも角川新書)で一躍、有名になった岡山県真庭市と同県備前市日生町を、総勢16人のメンバーで訪れた。2日間で県の北部と南部を一気に回るという強行軍だったが、事務局の尽力で、それぞれのキーマンからじっくりと話を聞くことができた。

 

面積の8割を山林が占める真庭市は林業が主産業。安価な外国産材の輸入増に伴って過疎化が進んでいた1984年、地元の製材会社「銘建工業」が、形が悪いために使い道がなかった未利用材などを燃料とする木質バイオマス発電を開始。今年4月には市や森林組合などが出資する新発電所が稼働した。福島原発事故以降、代替エネルギーが注目を集めるようになったこともあり、国内外からの視察がひっきりなしという。

 

同社の中島浩一郎社長は取材団との会見で「地域全体が関われるシステムにできたらと思っている」と訴えた。実際、その通りになりつつある。発電が軌道に乗るのに従って林業が息を吹き返し、雇用が増え、地元に残る若者も出てきた。太田昇市長は「地元に誇りを持てれば、進学で一度は離れてもいずれ帰ってくる」と説明してくれた。

 

日生町も、同様に視察が相次いでいる。高度成長期の水質悪化で沿岸のアマモの多くが姿を消し、漁獲高が減少。県の水産課長も務めた田中丈裕さん(現NPO法人里海づくり研究会議事務局長)と漁協が協力して再生に取り組み、粘り強く活動を続けた結果、地域全体が意義を理解するようになった。「ここでは『海からおこぼれをいただく』という考え方が代々受け継がれている」と田中さんは話した。

 

2つの地域ともまだまだ課題が多く手放しで称賛するわけにはいかないが、関係者の表情は自信に満ちていた。地方再生に何が必要か、そのヒントを示しているように思えた。


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