2015年09月04日 18:00 〜 19:45 10階ホール
試写会「ドローン・オブ・ウォー」

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会見リポート

無人機攻撃の時代 求められる運用の透明性

油井 秀樹 (NHK国際部)

米国内の軍事基地の一角に並ぶコンテナ。窓がなく薄暗い中、兵士たちは無人機が映し出すモニター画面を見つめ、テレビゲームのようにミサイルを発射する。上司の命令には逆らえず、殺害したのがテロリストか市民かわからない。正義と悪の区別がつかなくなり、精神を病み、家庭も崩壊する…。

 

米国が重宝する無人機「ドローン」の負の一面を描いたこの映画。現代の戦争の実態を明らかにした作品だ。ただ、見終わった後、少し物足りなさも感じた。それは、描かれているのが攻撃する米側の葛藤だけで、攻撃を受ける側の視点が少ないことにパキスタンに駐在していた自分には不満だったようだ。

 

私は2011年から13年までの2年間、イスラマバード支局の記者だった。当時、パキスタン北西部では、米無人機による攻撃で頻繁に死者が出ていた。しかし、米国政府は全く情報を公開せず、誰を狙ったのかはもちろん、攻撃の有無すら明らかにしない。犠牲者の中に女性や子どもがいても遺族や被害者への説明も一切ない。「秘密作戦だから何も言えない」と繰り返すだけだ。私も取材で知り合った少年が後日、無人機で殺害されたと聞いて、強い衝撃を受けた経験がある。反米感情が高まり、新たな過激派を生み出す原因にもなっていた。

 

オバマ政権は、自国の兵士を危険にさらさず、敵を殺害できるとして、無人機を多用してきた。しかし、根拠や理由も示さず、殺害を繰り返すのは明らかに問題だ。近年、この問題が国連などで取り上げられ、無人機の運用の透明性を求める声は高まっている。情報公開を拒んできた米国で、この映画が製作されたことは高く評価したい。無人機の使用は今や世界に広がっている。この映画を通して米国内外で議論が高まり、透明性が増すことを期待している。


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  • 「ドローン・オブ・ウォー」

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