2015年05月11日 15:00 〜 16:30 10階ホール
富田武 成蹊大学名誉教授 「戦後70年 語る・問う」⑯シベリア抑留問題

会見メモ

日本人シベリア抑留問題で現地調査や関係者の聞き取りなど研究を積み重ねてきた成蹊大学の富田武名誉教授が、日本人のシベリア抑留の実態がどこまで解明、研究されているかについて話し、記者の質問に答えた。
司会 土生修一 日本記者クラブ事務局長


会見リポート

抑留者の「最期」伝えるために

前田 啓介 (読売新聞社会部)

いまだ実態が不明な旧ソ連による「日本人抑留者」について、厚生労働省が新たに1万人超の死亡者名簿を公表した。この分野の碩学が、公表の意義と残る課題を語ってくれた。

 

北朝鮮や南樺太など、シベリア以外での死亡者の名簿が公表されるのは初めて。特に北朝鮮は国交がなく、政府に資料の有無を確認することさえ困難で、これまでもっとも実態が分からなかった地域だったが、「抑留の全体像把握の一歩となる」という。ロシアや北朝鮮などには、抑留の資料が依然として多く埋もれている可能性があり、「政府は資料の提供を粘り強く求めるべきだ」との意見は極めて当然だろう。

 

一方、課題に挙げたのが補償問題だ。2010年に成立したシベリア特別措置法によって、強制労働をさせられた旧日本兵らには特別給付金として最高150万円が支給されるが、樺太や北朝鮮は対象外となっており、「特措法の対象としてなにがしかの補償をすべきではないか」と提案した。

 

70年たっても、多くの遺族は親族が酷寒の地のどこで、どのように死んだのかを知ることはできなかった。今回の公表を、抑留の全貌解明へとつなげ、遺族に抑留者の「最期」を伝えてほしい。


ゲスト / Guest

  • 富田武 / Takeshi Tomita

    日本 / Japan

    成蹊大学名誉教授 / professor emeritus, Seikei University

研究テーマ:戦後70年 語る・問う

研究会回数:16

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