2015年01月27日 15:00 〜 16:30 10階ホール
渡邊啓貴 東京外国語大学教授 研究会「フランス週刊紙銃撃事件」

会見メモ

東京外国語大学の渡邊啓貴教授が「同時テロとフランス社会」というテーマで話し、質問に答えた。
司会 樫山幸夫 日本記者クラブ企画委員(産経新聞社)


会見リポート

「多文化社会を意識したに新たな基準を」

林 路郎 (読売新聞論説委員)

預言者ムハンマドを風刺し続ける仏政治週刊紙の姿勢と、「表現の自由」の貫徹を訴えたパリ大行進は、世界各地で賛否両論を巻き起こした。

 

日本でも、シャルリ・エブド紙の表紙転載をめぐる対応は、新聞社ごとに分かれた。黒白つけ難いテーマであり、論争は続くだろう。

 

これについて、仏政治を30年以上も観察してきた研究者は、議論に混乱があると指摘した。

 

カトリック教会が国や人々の生活を隅々まで支配した旧体制を打倒したのがフランス革命。新たな体制、つまり国家を守るため、人は公の場で宗教的中立を貫く。それは、日本で普通意識される政教分離概念より大きな「共和国(つまりは民主主義)の成り立ちの大きな原理」なのだと説く。

 

だから「仏国民は、これを少数派(イスラム教徒)いじめとは捉えていない」のだとも。

 

フランス人の多くが、共和国のよって立つ原則の揺らぎを恐れたのか。「西欧の国民国家の在り方、先進国の在り方が問われている」。事件の意義を、そう総括した。フランスもそろそろ、「多文化社会を意識した新たな基準を作らねばならない」。愛も込めた忠告が、重く響いた。


ゲスト / Guest

  • 渡邊啓貴 / Hirotaka Watanabe

    日本 / Japan

    東京外国語大学教授 / Head,International Relations, School of International and Area Studies, Tokyo University of Foreign Studies

研究テーマ:フランス週刊紙銃撃事件

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