会見リポート
2015年01月30日
12:20 〜 14:00
10階ホール
榊原定征 経団連会長 昼食会
会見メモ
経団連の榊原定征会長が「『豊かで活力ある日本』の再生」と題して話し、記者の質問に答えた。
司会 石川一郎 日本記者クラブ理事(日本経済新聞)
代表質問 安井孝之 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)
会見リポート
榊原ビジョンが目指すもの 安倍政権との距離感は?
安井 孝之 (企画委員 朝日新聞編集委員)
「経済と政治は車の両輪」と言われ、どちらがパンクしても走れない。最近の経団連会長(御手洗元会長、米倉前会長)は「政治」との不協和音に苦しんだ。それに比べ榊原会長は政治的には安定な安倍政権がパートナーで幸せである。
しかし、いささか政治との距離感が近すぎないかと心配する向きもある。この日の質疑でも「ズブズブの関係では」と懸念が出た。
会長は、この1月に発表された榊原ビジョン「『豊かで活力ある日本』の再生」を説明したが、その内容は安倍政権の成長戦略と重なり合う部分が多い。経済界独自の政策としてはパンチ力が弱いようにみえた。
独自性と言えば、女性会員から質問があった女性活躍目標。政府は女性管理職を2020年までに30%へと引き上げる目標を立てているが、榊原ビジョンは30年までに30%と先送り。経済界に一層の努力を求められるテーマにはやや腰が引けているのが気にかかる。
政治家も経済人も、もちろんジャーナリストも小粒になったといわれる時代である。かつて「財界総理」と尊称された経団連会長には首相にも、国の政策にも、あるいは国民に対しても、堂々と言うべきことを言ってほしい、と願うのはないものねだりの部類だろうか。
会見前後に来日中だったトマ・ピケティ(『21世紀の資本』の筆者)は、富める者が富んでそのおこぼれを多くの国民が受け取るという「トリクルダウン理論」には否定的。安倍政権も経団連もトリクルダウンで日本を成長させるという思惑だが、榊原会長は「(ピケティとは)矛盾はしていない」と真っ向対立を避けた。
望むらくは「立場は異なるが、私たち経済界がしっかり稼ぎ、給料も上げ、皆さんを幸せにします。任せてください」と、どーんと胸をたたいて、言い放ってほしかった。
ゲスト / Guest
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榊原定征 / Sadayuki Sakakibara
日本 / Japan
経団連会長 / Chairman, Keidanren (Japan Business Federation)