2015年01月26日 15:00 〜 16:30 10階ホール
加藤出 東短リサーチ社長 研究会「2015年 経済見通し」③ 

会見メモ

加藤出氏が今年の為替や金融政策の見通しなどについて話し、記者の質問に答えた。
司会 安井孝之 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

エコノミストが語る「楽観」と「慎重」

インフレ目標あせるな(加藤)
失敗したリコノミクス(柯)
「SHEEP」な世界に(渡辺)
原油安で2%成長も(フェルドマン)

 

 

2015年の日本経済は――。ゲスト4人の見立ては「楽観」と「慎重」の間で、かなり幅があった。

 

今年で13回目と最多登壇のロバート・フェルドマン氏は、最も楽観的。「ようやく円安が効いてきた」という。輸出数量が増え始め、訪日外国人観光客は倍増の勢いで、どちらも伸びが続くとみる。

 

原油安も追い風。1バレル=50㌦前後で行けば、他のエネルギー価格への波及もあり年間7~8兆円、ほぼ消費増税3%相当分の節約になる。効果は大きく15年度の実質経済成長率が「2%を超えてもおかしくない」と強気だ。雇用の改善で賃金も上昇に向かい、日米金利差の拡大で若干の円安、株価も上がると読む。

 

ただ、アベノミクスの評価は「第2の矢」の財政で社会保障の切り込みが進まず、「第3の矢」も雇用やエネルギーなどで改革が滞り、「正念場の年」という。

 

日銀ウオッチャーの加藤出氏は、世評が高い「第1の矢」の異次元の金融緩和にも辛口の評価。量的緩和の景気刺激効果を疑問視し、「円安誘導が本音」とみる。

 

日銀の大量の国債買い入れは、事実上の直接引き受けで、消費増税先送りのように、財政再建を後退させかねないと心配する。「インフレになるぞ、と日銀が言うほど消費者が財布のヒモを締める」悩ましさも指摘し、「やみくもにインフレ目標の2%を目指さないで、じっくり企業のもうける力を高めながら給料が上がる良い循環の中で、じわり物価が上昇するのが望ましい」と言う。

 

渡辺博史氏は、世界経済全体を展望し「今年中に底を打ってくれればいいなあ、という感じ」。昨年に続き海外メディアのカトゥーン(漫画)を素材に広範、多岐にわたって解説して頂いたが、ここでは羊年(SHEEP)にちなみ氏が挙げた5つの注目点を紹介する。

 

①S=鈍い(Slower)賃金上昇②H=激化する(Harsher)地政学的対立③E=ユーロ(Euro)圏の低迷④E=主要中央銀行の金融緩和政策の出口(Exit)の有無⑤P=石油と天然ガスの値下がり(Price―down)。

 

「中国」について柯隆氏は、向こう3年ほど公式統計で7%前後の成長(実態は6%程度)が続き、不動産バブルは金融緩和で崩壊が少し遠のいた、とみる。

 

ただ、李克強首相が旗を振り「輸出・投資依存から消費依存へ」「環境負荷の大きい産業から高度なサービス業へ」の構造転換などを目指す「リコノミクス」は「国有企業に邪魔され失敗した」と断言した。

 

共産党高級幹部、国有企業幹部、民営企業オーナーら人口の3%、4000万人の特権階級が富の大半を独占する一方、人口の6割の農民は市民権が与えられず、社会が不安定化している。中期的には、政治改革を怠ると成長を持続できず「中国リスク」が浮上するとみる。

 

日本経済新聞出身
土谷 英夫

 

(※この会見リポートは、研究会「2015年経済見通し」1月開催分の統合版です)


ゲスト / Guest

  • 加藤出 / Izuru Kato

    日本 / Japan

    東短リサーチ社長 / president, The Totan Research

研究テーマ:2015年 経済見通し

研究会回数:0

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