2015年01月06日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「戦後70年 語る・問う」⑩ 見田宗介 東京大学名誉教授 大澤真幸 元京都大学教授

会見メモ

見田宗介・東京大学名誉教授、大澤真幸・元京都大学教授が「1945/2015」と題して対談した。

司会:星浩企画委員(朝日新聞)
右=見田氏 左=大澤氏


会見リポート

安定期の現代世界 かつての成長は望めない

星 浩 (企画委員 朝日新聞特別編集委員)

日本を代表する社会学者の登壇である。参加者から「難解でよく分からなかった」といった不満が出たらどうしようかと心配しながら、会見を始めたが、それは杞憂だった。

 

見田宗介氏(右)は冒頭から、終戦時の体験談を分かりやすく話してくれた。弟子である大澤真幸氏も「初めて聞いた」というエピソードだ。

 

山形県に疎開していた見田氏が終戦の日を迎えたのは小学校2年生、7歳の時だった。担任の女性教諭が「米兵は日本人を串刺しにするかもしれない」と泣き崩れたそうだ。

 

その後、日本は米国の庇護の下で奇跡の復興を成し遂げる。見田氏は「戦前よりも、はるかに明るく楽しい社会になった」と感じた。見田氏は、戦後日本の歩みを「現実」の反対語である3つの言葉に表される時期を経たと分析する。民主主義や経済の繁栄は、最初は「理想」と思われていたが、やがて「夢」に変わり、それが「虚構」になっていった。折々の流行歌や映画などを紹介しながら、戦後史を鮮やかに解析してくれた。

 

大澤氏は日本人の意識調査を分析。70年代後半までは、高度成長に合わせるように「日本人が優れている」という意識が上昇したが、その後低下傾向が続いた。ところが、90年代後半から再び「優れている」という反応が増え始める。これがナショナリズムの投影ではないかという。

 

見田、大澤両氏とも、現代世界は資源などの制約から、かつてのような成長は望めず、安定期に入っていると指摘。にもかかわらず、成長を志向することに無理があると説いた。アベノミクスを進める日本にとって重い示唆である。1時間半の予定を20分もオーバーしたが、会場から「もっと聞きたかった」という反応が聞かれて、胸をなで下ろした。


ゲスト / Guest

  • 見田宗介 東京大学名誉教授 大澤真幸 元京都大学教授

    日本 / Japan

研究テーマ:戦後70年 語る・問う

研究会回数:10

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