2014年11月07日 15:00 〜 16:30 10階ホール
加藤典洋さん 「戦後70年 語る・問う」③

会見メモ

「敗戦後論」(1995年)から『人類が永遠に続くのではないとしたら』(2014年6月)までの著述を軸に、加藤氏にとって「戦後」とはどのような問題であったかについて話し、質問に答えた。

司会 会田弘継 日本記者クラブ企画委員長(共同通信特別編集委員)


会見リポート

「戦後はまだ終わっていない」

鶴原 徹也 (読売新聞編集委員)

「戦後のことをずっと考えてきた」と言う。敗戦3年後に生まれ、「第2世代」を名乗る。評論家としての足跡は「第2世代にとっての戦後論」の構築だった。「平和主義とかいろんなものを含んだ戦後精神、第1世代がどうしても伝えたいと思った実質、それを戦争体験に依拠しないでわが事として受け取るような考え方を作り上げる」取り組みだった。

 

世の流れにあらがう足跡でもあった。冷戦が終わり、日本では「社会党に象徴される戦後的なものを支持した層が四分五裂して敗退」した。「戦後的なものを新しい見方で見ていかなければならない」との思いで「敗戦後論」(1995年)を書いた。

 

イデオロギー戦争となった世界大戦で敗れた日本は「宗旨替え」をし、「悪しきイデオロギー」にくみした戦死者を哀悼できない。この問題に「しっかり向き合い、答える必要」がある。天皇には「自分は日本の国民にも他国の国民にも迷惑をかけたことについて責任を感じる」と発言しなかった「戦後責任」もある。憲法は「与えられたものが良いものだから、それでいいじゃないか、とはならない。自分たちで血を流して作り出すものだ」――。

 

「戦後はまだ終わっていない」と感じている。「東アジアで信頼関係を構築できない。謝罪できていない」「政治的未成熟、無責任体制はそのまま」「日本政府は原爆を使った米国に抗議すべきだ」

 

質疑で、「侵略戦争は駄目だが防衛戦争は肯定すべき」との問いに対し、「戦争ってのは、そこで人が死ぬでしょ」とやや気色ばんだ。「大義のある戦争か大義のない戦争か、そんなことは言わない。そんな戦争観をね、日本はああいう風に敗れたことで作ってきたと思います」

 

いま、「若い人に向けて戦後の本を書こうと思っている。タイトルは『戦後入門』。戦後はいまや入門すべきもの」と言う。


ゲスト / Guest

  • 加藤典洋 / Norihiro Kato,

    日本

    文芸評論家・早稲田大学名誉教授 / literary critic

研究テーマ:戦後70年 語る・問う

研究会回数:3

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