2014年09月11日 18:00 〜 19:30 10階ホール
シリーズ企画「戦後70年 語る・問う」①赤坂真理さん、原武史さん 対談

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会見リポート

戦後史への新しい切り口を提起 それぞれの目で考える「戦後70年」スタート

会田 弘継 (企画委員長 共同通信特別編集委員)

「戦後70年 語る・問う」。これから来年の夏にかけて、このタイトルの下で多彩なゲストを招いて、戦後70年の意味を問い、語ってもらおうと思う。大型企画だ。すでに各企画委員からは、たくさんのゲスト候補の提案が寄せられている。

 

戦後70年をどう総括するか、という視点からだけでない。あの時のことを、真相を、いまだから語ってもらいたい、という人たちも候補になっている。企画委員会は走りながら考えて、会見シリーズを意義あるものにしていくつもりだ。

 

登場するゲストの見解や回想を、戦後70年をめぐる企画記事や論評のヒントとしてぜひ活用してもらいたい。別途再取材するなどして取り上げてもらえれば、企画を立てた側としても本望だ。

 

というわけで、シリーズの皮切りに作家の赤坂真理さんと日本政治思想史研究の原武史・明治学院大学教授に登壇願い、対談してもらった。第1弾ということで、一般市民に公開し、質問用紙記入方式で質疑にも参加していただいた(催しの告知にあたっては毎日・読売・東京各紙の協力を得た。記して感謝したい)。

 

「戦後」といえば、焼け跡から始まり、60年安保…というようなパターンから抜け出し、原教授の著書『滝山コミューン一九七四』が描く団地の中の冷戦構造、あるいは注目を浴びた小説『東京プリズン』で赤坂さんの叙述が垣間見させた戦後の矛盾など、戦後史への新しい切り口を提起できる対談になったのではないかと思う。

 

天皇、鉄道などを軸に政治・社会思想を語る原教授は、戦前・戦後を貫いて日本社会の中にある全体主義的性向をあぶりだしてくれた。さらに宮中祭祀に注目しながら近代天皇制を見る視点は、日本的全体主義の奥底で働く非合理な力を示唆し、実に興味深かった。

 

私鉄経営者の考え方、住宅地・団地計画、居住する著名人の政治的傾向などをたどって、各私鉄の「沿線の思想」を抽出してみせる語りも、知的興奮を誘った。公開された昭和天皇実録についても祭祀に注目して独特な分析をしており、これからも当クラブで知見をお聞きしたい。

 

赤坂さんは、暴力を否定した戦後日本と平和民主主義の裏側にある抑圧や暴力性といったことに強い関心を持たれているようだ。「女性的であることの暴力性」という言葉も出てきた。彼女の小説の背後にある思想なのだろう。時間の都合で奥底にまでは分け入ることができなかったが、戦後70年会見シリーズでは、彼女のような文学者が時代をどうみてきたかも探っていこうと思う。


ゲスト / Guest

  • 赤坂真理、原武史 / Mari Akasaka , Takeshi Hara

    日本 / Japan

研究テーマ:戦後70年 語る・問う

研究会回数:0

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