2014年09月02日 00:00 〜 00:00
宝塚プレスツアー (9/2~3 1泊2日)

申し込み締め切り

会見リポート

「ゆるキャラ」の原点は「タカラヅカ」―「宝塚プレスツアー」に参加して

髙橋 正 (中日・東京新聞出身)

当方、当年とって81。日本記者クラブが宝塚へ連れて行って『エリザベート』を見せてくれるという。これまで一度も見たことのない「タカラヅカ」。一生に一度くらいは見ておいても損はなかろうと応募したら、見事当選して、久しぶりに遠足気分で汽車に乗った。


近年、ウィーンやロンドンで当たりを取ったミュージカル『エリザベート』は実は、愛と死の相克という深遠な哲学的テーマで、とても「ヅカ」のステージに乗るような話とも思われない。が、「ヅカ・ガールたち」はそれを、いとも軽やかに演じ、満員の客席の8割を占める「女子供たち」も気軽に楽しんでいる。しかも、フィナーレは目も絢な縦横のラインダンス入りグランド・レヴュー。これでは、「ヅカは女子供の見もの」と突っ張っている方が野暮というものであろう。


「宝塚歌劇」は今年創設百周年。関係者はこの百年を「ヅカの努力と進化の歴史」と言う。当初の「宝塚少女歌劇」から「少女」が取れて、本格的ドラマと歌と踊りのミュージカルに成長したというわけだ。確かに、宝塚歌劇が「歌劇」の一ジャンルとして存在感を保っていることは、いまや否定すべくもない。


しかし、それが百年も続いたとなると、これは「関係者の努力」の他にも、その原因を求めないわけにはいかない。それは筆者にいわせれば、戦後の日本社会では、その「女子供」の存在感と発言力が格段に高まり、いまや空前絶後の平和と繁栄の中で、社会全体が「女子供化」していることにあるといっても過言でない。


「清く正しく美しく」はヅカの創始者・小林一三のうたい文句だが、人生も社会もそうありたいという「女子供の夢」が、いまや大の男も含む日本社会全体の願望として定着しつつある。宝塚は、その風潮を先取りしたが故に百年も生き続け、そこに今日の隆昌を見た最大の理由がある。


「宝塚歌劇」のふりまく夢は、同じ宝塚市にある漫画家・手塚治虫の記念館(創設20周年)にも横溢している。手塚は多感な少年期の20年間、宝塚に住み、その長編ストーリー少女漫画『リボンの騎士』が宝塚歌劇の影響をもろに受けていることはつとに知られているが、出世作『鉄腕アトム』以来、彼の漫画には、からっとした夢こそあっても生臭い現実感は皆無で、そこがまた、宝塚歌劇と通底する。


手塚は関西の漫画家・酒井七馬と共に『新宝島』で、それまで漫画の定型であった「四コマ漫画」の枠を取り払う革命的離れ業をやってのけたが、以後の漫画家たちは四コマの桎梏を脱して闊達に振る舞い、漫画は劇画に、さらに「アニメ」へと発展して、活字メディアだけでなく、あらゆる社会空間へと広がっていった。


いまや全国各地に誕生している「ゆるキャラ」の原点を、「タカラヅカ文化」にみた思いがした。


ゲスト / Guest

  • 宝塚プレスツアー

ページのTOPへ