2014年08月07日 17:30 〜 19:30 10階ホール
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会見リポート

チリの転換点 若き視点で捉え描く

江口 義孝 (NHKグローバルメディアサービス 元NHKリオデジャネイロ支局長)

チリの独裁者ピノチェト将軍の姿を間近に見たのは、軍の創立記念日の取材の際であった。式典終了後に私のすぐ近くを歩いて車に乗り込んだが、グレーの軍服姿で随分と恰幅のいい体格が印象的だった。


チリ現代史での決定的な転換点は、70年のアジェンデ社会主義政権の誕生と、88年の国民投票でのピノチェト独裁政権の終焉である。


パブロ・ラライン監督は、与党の圧倒的優勢とされていた国民投票に向けて野党連合が展開したさまざまな運動の中で、最も象徴的で影響力の大きかったわずか15分間の深夜テレビキャンペーン番組に「光を当てた」。主人公レネは、売れっ子のコマーシャルディレクター。番組制作に加わることを野党幹部から依頼された彼は、常套的な政治表現を排除し、平和や民主主義をわかりやすく映像化した作品を仕上げる。また、「NO」の文字に6つの党派のシンボルカラーで作った虹をあしらったエンブレムも考案した。


当然、「軽率」「不真面目」と厳しい批判を受けるがひるまない。彼には忌まわしい過去の糾弾や弾劾の主張はテレビでは醜く見え、若い世代の心には届かないと思えるのだ。人々は未来への希望と喜びを求めているのだと確信する。27日間のキャンペーンが始まるとレネの番組が人々に強いインパクトを与え、与党は次第に劣勢に立たされていく。


投票日。敗北を受け入れられないピノチェト将軍はクーデターを画策していたといわれるが、空軍司令官らの反発に遭って断念。首都サンティアゴには、勝利の大合唱がこだまする。


あれから四半世紀。発展とともに格差の拡大を生んだ社会を見据えながら、監督は、ひたすら利益を追求する経済に翻弄される「いま」について、深く思慮をめぐらすように問いかけているように思える。


東京ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

c2012 Participant Media No Holdings,LLC.


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